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社説

次の扉へ 米中対立の行方 「新冷戦」に勝者はいない

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 米中の国交正常化から40年を迎えた元日、トランプ米大統領と習近平国家主席は互いに祝賀メッセージを交換した。しかし、両国関係は「不惑」というには程遠い。

     「休戦」状態で年を越した米中貿易紛争の解決に向け、北京で次官級協議が行われたが、妥結に向かうかは予断を許さない。安全保障や次世代ハイテクをめぐる摩擦も強まる。

     世界1、2の経済大国の対立は世界経済の行方にも深刻な影を落としている。対立を制御し、共存していく道を探るべきだ。

     昨年は米国の対中不信が一気に顕在化した。貿易紛争だけではない。ペンス副大統領は中国軍の海洋進出やサイバー攻撃、人権弾圧、監視強化などを総合的に批判し、「経済、戦略関係のリセット」を宣言した。

    「ツキディデスのわな」

     米メディアは「新冷戦の兆し」と評し、東西冷戦幕開けを告げたチャーチル元英首相の「鉄のカーテン」演説と比べる見方も広がった。

     古代ギリシャでは覇権国スパルタが新興国アテネの台頭に危機感を抱き、戦争に至った。歴史家の名前を取って「ツキディデスのわな」と呼ぶ。中国の勃興で米中が同様のわなに陥ることも懸念されている。

     米国の強硬姿勢の背景には40年にわたる関与政策が中国の政治的変化につながらなかったという失望感がある。ペンス氏は「(中国では)統制と抑圧が急激に進んだ」と指摘した。似た認識は保守派からリベラル派まで幅広い層に共有されている。

     中国は一昨年の共産党大会で今世紀半ばの「社会主義現代化強国」建設を目標に掲げ、昨年には憲法改正で国家主席の任期制限を撤廃した。米国の目には独裁体制強化で米国に迫ろうとする戦略と映っている。

     貿易紛争もトランプ氏の保護主義政策だけが原因ではない。国有企業を優遇し、外国企業を同等に扱わないことなど中国の貿易慣行の不公正さは日欧も批判している。

     中国が外国企業に技術移転を強要することを禁じる法律の策定を進めていることは望ましい動きだ。衝突を避けたいのなら、既存の国際ルールや価値観を尊重する必要がある。

     次世代高速通信5G技術で業界をリードする華為技術(ファーウェイ)の最高幹部がカナダで拘束された事件に象徴されるようにハイテク覇権をめぐる米中対立も深まる。

     中国が科学技術政策に日米を大きく上回る伸びで資金、人材を投入し、目覚ましい成果を上げていることは確かだ。中国の発展の権利や合法的権益は守られるべきだろう。

     しかし、米国は中国が技術情報を盗んでいると主張している。中国は否定するが、対立回避にはサイバー空間をめぐるルール作りで協力するなど中国側の努力も不可欠だ。

     米国がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱する方針を決めた背景にも、中国が対象となる中距離ミサイルの開発を進めていることへの危機感がある。

     中国は30年も軍事力拡大を続けてきた。米露との新たな軍備管理の枠組みに加わるべき時だ。それは際限ないように見える軍拡への懸念を和らげることにもつながるだろう。

    日本も衝突回避に動け

     米中関係は経済交流がほとんどなかった米ソとは全く異なる。互いに最大級の貿易パートナーであり、中国は米国債の最大の保有国だ。

     年初から中国での販売低迷をきっかけにした「アップル・ショック」が世界の市場を揺るがした。相手を追い詰めようとしても自らも損失を負う相互依存関係が存在する。

     日本を含めたアジアや欧州各国も事情は同じだ。米国の同盟国であっても中国は重要な貿易パートナーだ。米中対立が深まれば、打撃を受けることは避けられない。

     米中の覇権争いは長期化するという見方も根強い。しかし、「新冷戦」に発展して対立が恒常化すれば経済だけでなく、朝鮮半島や台湾海峡など地域情勢の緊迫化、混迷にもつながりかねない。

     習氏は「協調、協力、安定を基調とした中米関係を推進したい」と対立回避を優先する意向を示している。現実的な対応だ。まずは貿易紛争の打開を目指すべきだ。

     米国と同盟関係にあり、隣接した中国と長い歴史的関係を持つ日本にとって米中関係の行方は死活的に重要だ。今年は主要20カ国・地域(G20)首脳会議が大阪で開催され、米中首脳も来日を予定する。対立緩和に向けた外交努力を進める時だ。

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