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日韓、溝さらに深く 徴用工、レーダー照射、慰安婦…韓国は先送り戦略

新年の記者会見で報道陣の質問に答える韓国の文在寅大統領=ソウルの青瓦台(大統領府)で10日、ロイター

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、新年の記者会見で元徴用工訴訟などを巡り悪化する日韓関係について、「共に知恵を合わせるべきだ」と述べつつも「日本側が問題を拡散している」と不満を隠さなかった。しかし、元慰安婦支援財団の解散や韓国海軍によるレーダー照射問題など、韓国側からの否定的な動きが続く中、日本側には文政権が日韓関係を管理するために主体的な役割を果たしていないとのいらだちが募っている。

 「実は、あなたの後ろの記者をあてたんだけどね」

 文在寅大統領は10日、徴用工問題の対応を問うNHK特派員の質問に答えた後、こうもらして会場の笑いをとった。支持率40%台に落ち込んだ文氏の今年の新年会見は、冒頭発言で国民経済向上の話題が9割を占め、日韓関係には言及なし。安保外交分野で質問した9人のうち3人は海外メディアだったが、日本メディアは指名されなかった。経済問題にテーマが移ったところで、日本人記者に徴用工問題を問われたのは全く想定外だったようだ。

 文氏は徴用工問題への回答の前に「基本的な話だが」と切り出し、日韓協定後も請求権問題が噴き出しているのは「韓国ではなく、不幸な歴史がつくり出した」と力説。それを謙虚に直視せず「日本の指導者が政治争点化している」と不快感を隠さなかった。

 「問題の根源」。青瓦台(大統領府)周辺には、元徴用工の個人請求権問題が浮上した原因は、日本の植民地支配が発端だとの認識がある。昨年10月の最高裁判決以降、元徴用工訴訟で日本企業への賠償命令が相次ぐ中で、司法判断を尊重しつつ国内処理する妙案は手詰まり状態。この「根源」を作った日本が事態打開に協力すべきだとの思いから来るいらだちが、新年会見で図らずも表面化したかたちになった。

 ただ、国内経済が低迷する中、報復の恐れのある日本との外交戦争は避けたいのが本音だ。日韓請求権協定に基づく紛争解決のための政府間協議に応じざるを得ないという方向に傾きつつも、「安倍政権が旭日旗問題、レーダー照射問題と政治的争点を広げて攻勢を仕掛けてきている今は、下手に応じないほうがいい」(文政権外交ブレーン)と慎重な姿勢を維持する。対応策は「検討中」と日本に誠意を見せ続ける姿は、時間稼ぎの作戦にも見える。

 李洛淵(イ・ナギョン)首相を中心に対応策の検討を始めて2カ月余。最高裁判決で少数意見を出した判事や日本専門家からの聞き取りを続けていたが、今は検討作業がストップした。与党関係者は「あまりに多くの利害が絡むので、首相室で調整できず、青瓦台で検討することになった」と実情を明かした。

 韓国政府が時間をかける背景には、徴用工訴訟の最高裁判決の遅延を巡り、朴槿恵(パククネ)前政権下の外務省と最高裁が癒着していたとされる職権乱用疑惑の捜査が続いており、対日外交で譲歩できないという事情もある。今後の捜査次第で、朴政権が交わした慰安婦問題に関する日韓合意の見直し論が再燃する可能性もあり、文氏は国内世論を引き続き注視しながら対日政策の立て直しを模索する見通しだ。【ソウル堀山明子】

日本「深刻な状況」

 韓国の元徴用工訴訟を巡って9日に政府間協議を要請した日本政府は、文在寅大統領の発言に注目していた。文氏が協議には触れずに日本を批判したことに対する日本側の反発と失望は強く、日韓の溝は深まるばかりだ。

 佐藤正久副外相は10日、司法判断はやむを得ないという文氏の見解を「協議要請中なのに回答をしないばかりか、事実を事実として見ない発言の繰り返しだ」とツイッターで批判。外務省幹部も「まったく人ごとのような発言ばかりだった」と不満をあらわにした。

 自民党の岸田文雄政調会長(前外相)は「国際的な条約(請求権協定)は当事国全体を拘束する。国際法違反の状態を是正する責任は韓国側にある」と記者団に語った。政調会長として地方を訪問した際の印象として「いらだちや強い憤りの声を聞く機会がずいぶん多くなった。深刻な状況だ」とも述べた。

 日韓間には問題が山積している。韓国政府は昨年11月、元慰安婦を支援する財団の解散を発表。同12月には韓国海軍駆逐艦が自衛隊機に火器管制レーダーを照射したと日本側が公表し、双方の主張の対立が続く。

 菅義偉官房長官は10日の記者会見で「日韓関係は非常に厳しい状況にある。さまざまな問題について韓国側に引き続き適切な対応を求めたい」と表明。「北朝鮮対応のために韓国との連携は欠かせない」という声はあるものの、安倍政権内で大勢にはなっていない。

 3月には日本の植民地支配に抵抗する3・1独立運動から100周年を迎え、韓国では反日感情が一層高まると予想される。文政権の支持率は低下しており、外務省幹部は「一般的に韓国は支持率が落ちると日本たたきに出る。先方の国内問題だ」と突き放した。【秋山信一、浜中慎哉】

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