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つながり紡いで

コムカフェ(箕面市) 多様な背景「溝」越えて=岩城あすか /大阪

年1回の交流会で親睦を深めるコムカフェの日替わりシェフとボランティアら。右から3人目は筆者=大阪府箕面市の市立多文化交流センター内のコムカフェで

 「梁(りゃん)さん、今日のメニューは?」「中国の私の故郷、西安の名物料理・ビャンビャン麺です。手打ち麺に豚肉のみそ煮と野菜を混ぜます。黒酢が味の決め手です」と日替わりシェフの梁さんが説明する。午前11時ごろ、慌ただしくランチの準備をしながら、盛り付け方法や来客への説明ポイントを、その日のスタッフと確認し合う。

     大阪府箕面市立多文化交流センター(小野原西5)にある「コムカフェ」(comm cafe)。世界の家庭料理を日替わりで提供する。シェフになれるのは地域の外国人市民だけ。担当の職員も、運営メンバーも、半数以上は外国出身者だ。日々異なるメニューとスタッフによるいわば毎日が「新装開店」の店。2013年5月にオープンしてから、シェフを務めたのはベトナムやモロッコなど26カ国60人にのぼる。

     カフェの共通言語は「やさしい日本語」。大阪弁なら「炒め物、まだやからスープ入れんといて」と言うところを、「スープは最後に入れてください。今シェフが炒めているので、冷めてしまいます」と言い換える。できるだけわかりやすい表現で主語もはっきりと話す。シェフとボランティアが集まる毎月のミーティングでは、結構な時間がかかる。労力をかけても理解度はまちまちで、誤解や思い違いが日常茶飯事だ。

     9年前、「居場所がない」という仲間の相談を受けてこのプロジェクトを始めた韓国出身の崔聖子(ちぇそんじゃ)さんは、今もアドバイザーとして毎日店に入る。崔さんは言う。「言葉や国籍は違っても『忖度(そんたく)』せずに、思ったことを言い合える関係を築けた。粘り強く何度も話し合わねばならないので、メンバー全員に相当の忍耐が求められる」

     非常に効率は悪い。だが、日本人と外国人の「溝」を意識しつつ、多様な背景を持つ人たちが、ともに運営に携わるプロセスそのものがこのカフェの存在意義である。

     「日本の過剰な接客は嫌」。だから、来客には「いらっしゃいませ」とは言わず、「こんにちは」と呼びかける。水も2杯目からはセルフサービスだ。「外国人シェフを『お客さん扱い』したくない。しんどいけれど、一人ですべての作業をやり切る覚悟が必要」。こんな接し方で大丈夫?とハラハラするが、日本の、いや世界のどこにもない空間になっている。外国出身メンバーの視点に学ぶところが非常に大きい。

     コンセプトは、ありのままにフラットな関係をつくること。シェフも、スタッフも、ボランティアも、お客さんも。ときに「3M(無理、むら、無駄)の極致」「愛想がない」と批判されるが、互いにぎりぎりの線を追求する運営スタイルだと思えば、腹は立たない。立場や意見が違っても、同じテーブルで賄いを食べ、一緒に片付けをする日々の積み重ねこそ、地道ながらも最もチャレンジングな共生の最前線だ。


     地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は2月8日掲載予定。


     ■人物略歴

     1974年生まれ。箕面市立多文化交流センター館長・市国際交流協会総務課長。トルコ・イスタンブールに4年半留学。家庭でもトルコ出身の夫、中学生の長女とトルコ語、日本語を使い分ける多文化の生活を送っている。

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