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余録

福沢諭吉は西洋の統計学の効用の説明にあたり…

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 福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち)は西洋の統計学の効用の説明にあたり、男女の結婚を決めるのは出雲の神様ではなく米の値段だと説いている。穀物の値段が安い時は結婚が多いという英国の統計での相関関係に着目した推論だった▲「土地人民の多少、物価賃銭の高低、婚する者、病に罹(かか)る者、死する者等、一々その数を記して表を作り、これかれ相(あい)比較する時は、世間の事情……一目(いちもく)して瞭(りょう)然(ぜん)たることあり」。諭吉による「スタチスチク」(統計学)の説明である▲明治の先人が近代国家の基礎として統計を重視した卓見には改めて感謝したい。米価と結婚の因果関係は定かでないが、データの比較や組み合わせから導き出される社会の自画像なしに、なすべき政策も目指すべき未来も描けない▲それは失業給付金などの算定、景気動向指数や月例経済報告にも用いられる国の基幹統計の一つだという。賃金や雇用の動向を示す厚生労働省の「毎月勤労統計」の一部調査が15年間も所定の方法と異なる手法で行われていたという▲大規模事業所は全数調査すべきところ、東京都内で調査したのは約3分の1だった。結果、その間の失業給付金に巨額の過少給付が生じていた可能性がある。昨年からは非公表のまま全数調査に近づけるデータ補正をしていたという▲調査やデータ処理の方法の違う数字を「これかれ相比較」しては自画像がゆがむ。明治この方、良くも悪くも決まりごとをめぐる細部までの律義(りちぎ)さでは比類のなかった日本の役人に今何が起きているのか。

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