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余録

「秀句」とは優れた俳句や川柳のことかと思うが…

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 「秀句」とは優れた俳句や川柳のことかと思うが、昔はしゃれや語呂(ごろ)合わせを指した。もとは掛けことばなど和歌の技巧的表現を言ったのが、歌を離れてだじゃれのようなものまで秀句というようになる▲まあ今日のおやじギャグに至る日本人のだじゃれ好きは筋金入りである。狂言には気のきいた秀句を言えば舟賃をただにするという渡し守が出てくる。無一文の旅の僧は茶屋の主人に舟賃代わりに「平家の公達(きんだち)」と言う策を教わった▲その心は「薩摩守忠度(さつまのかみただのり)」、ただ乗りというわけである。もっとも僧は肝心のこのオチを忘れ、渡し守にしかられてしまう。室町時代の作者はこの「薩摩守」=ただ乗りの秀句が500年近い先の世でも重宝されると思わなかっただろう▲だがこちらはしゃれにも笑いにもならぬ鉄道会社の子会社による大規模不正乗車である。京王電鉄の子会社「京王観光」の2支店が10年間にわたり団体旅行客の数をごまかしてJR各線に乗せていたという。平忠度もびっくりである▲JRの切符の発券システムを利用し、団体客の数をいちいちチェックしない信頼関係に乗じた不正のようだ。「それをやっちゃあ、おしまいよ」という裏切りが10年間も引き継がれ、内部で問題化する人がいなかったのも奇妙である▲JR各社は損害賠償を求める構えで、観光庁も事実確認を始めた。当の京王観光は不正の全容は調査中というが、鉄道会社の身内の「薩摩守」、日ごろ京王線をまじめに利用する乗客も事の真相を知りたかろう。

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