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社説

20歳になったユーロ 試練となる財政の共通化

 せいぜい10年の命。欧州連合(EU)もろとも崩壊する--。そう予測したのは、ノーベル経済学賞を受賞した米国人のミルトン・フリードマンだった。

     だが予測に反し、単一通貨ユーロは生き延びる。今月1日、ついに20歳の誕生日を迎えた。

     11カ国で始動したユーロ圏は、19カ国まで拡大した。ソ連時代、ルーブルを使用していた国の中から、バルト3国のように、将来フランスと通貨を共有する国が現れるなどと、どれくらいの人が予想しただろう。

     ひとたび経済危機に見舞われたら、大混乱の末に分裂する、と考えた人も少なくなかったはずだ。しかし、リーマン・ショック後の不況もギリシャの離脱危機も乗り切った。複数の主権国家が同意のもとに通貨を統合するという未曽有の実験は、想像以上の成果を収めた。

     ユーロが誕生していなかったら、慢性的な財政赤字や高インフレに悩んできた国は、今でも不安定な経済情勢に振り回されていたのではないか。ユーロ導入前、2ケタも珍しくなかったイタリアの物価上昇率は、導入後0~3%で推移している。

     何より、ユーロが採用国の国民に支持された意義は大きい。EUの定期世論調査によると、単一通貨に好意的な市民の割合は昨年、過去最高の77%に上った。

     しかし、ユーロの抱える根源的な問題は誕生時も今も変わらない。通貨や中央銀行を統合した半面、財政は相変わらず国単位、という中途半端な状態が生む問題だ。加盟国間の経済格差が拡大しても、一つの国のように、全体で財政のテコ入れをすることはできない。

     そんな中、昨年末のEU首脳会議が、ユーロ圏の共通予算創設に合意したのは、わずかな規模とはいえ、重要な一歩といえよう。

     今後、徐々に拡大していくことが求められそうだが、そのためにも各国は一層、財政規律を順守する努力が必要だ。共通予算の提唱者、マクロン仏大統領自らが、支持率回復のため財政健全化に背を向けるようでは、財政統合の展望は開けまい。

     信用を築くには何十年も要するが、失うのはあっという間だ。欧州の指導者らはこのことを共にかみしめるべき時ではないか。

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