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厚労省の不正統計 どれだけ背信重ねるのか

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 厚生労働省の「毎月勤労統計」で本来と違う不適切な調査が行われ、延べ約2000万人の雇用保険と労災保険が過少給付されていた。総額は567億円に上るという。

 統計法で定められた「基幹統計」の一つで、国内総生産(GDP)の算定根拠にもなる。重要な政策の基になる統計でなぜこんなことが起きたのか。徹底した調査が必要だ。

 政府は2019年度予算案を組み替え、04年までさかのぼって不足額を支払う方針だ。住所データが残っている人には手紙で知らせるが、連絡先がわからない人も多数いるはずだ。システム改修や住所確認など事務手続きのコストは大きい。

 同統計は労働者の賃金や労働時間、雇用の動向を示すもので、全国約3万3000事業所(従業員5人以上)が調査対象だ。東京都内の従業員500人以上の事業所は1464あったが、04年から491事業所を抽出した調査に変えていた。

 本来であれば調査結果を約3倍に復元して統計処理すべきなのに、それを怠ったため、給与水準が高い都内の大規模事業所のデータが大幅に削除され、全体の平均給与額が低くなった。

 雇用保険などの給付水準は同統計の平均給与額で決まっている。そのため、04年以降の給付が過少となっていた。

 さらに問題なのは、不適切な調査をしていたことが内部調査で発覚し、昨年1月分からは正規の調査規模に合わせる修正をしていたのに、何も公表しなかったことだ。過少給付の救済が遅れただけでなく、一貫性を欠くデータを公表し続けていたことになる。政府の統計の信頼性を傷つけた罪は重い。

 都内の大規模事業所の全数調査をやめたのは厚労省の判断だったと根本匠厚労相は記者会見で認めた。だが、なぜ抽出調査のデータを適正に修正せず、長年引き継がれてきたのかは不明だ。

 政府は56の基幹統計を一斉点検する。ほかにも不適切なデータがないか徹底して調べるべきである。

 年金記録のずさんな管理、裁量労働制に関する不適切なデータなど、厚労省の統計や記録の誤りは何度も繰り返されてきた。デタラメを許す土壌を変えなければならない。

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