メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

スタートアップ座談会

「大企業は3年で十分」「人生を自分でコントロール」 私が起業した理由

座談会で話す(右から)ブルームスキームの中里裕史CEO、MODALAVAの桂茉利子CEO、ventusの小林泰CEO=東京都千代田区で2018年12月26日、小川昌宏撮影

 ここ数年、日本でも若い世代による起業が増えているという。その背景にはどのような変化があるのだろうか。ベンチャー企業の経営者3人に、起業を取り巻く環境の変化や将来への期待について語ってもらった。【司会は東京本社経済部長】

起業コストが下がってよかった

 ――若い世代が起業を目指すようになっていると言われます。皆さんの周りではどうですか?

ventusの小林泰CEO=東京都千代田区で2018年12月26日、小川昌宏撮影

 ◆小林泰・ventus(ベンタス)最高経営責任者(CEO) 起業に経済合理性があるかどうかがポイント。今は大企業で働いて得られるものと、自分で起業して得られるものの期待値を比較すると、圧倒的に(大企業は)割に合わない。だから就職せずに起業しようかな、となる。

MODALAVAの桂茉利子CEO=東京都千代田区で2018年12月26日、小川昌宏撮影

 ◆桂jasmine茉利子・MODALAVA(モダラバ)CEO 例えば外資系金融で働いたとして、10年働いても3年働いても「外資系金融で働いていた」という対外的な評価はほとんど同じに見える。だったら3年働けば十分かなと。大企業に10年在籍したとしても、3年間で得たものの3倍を得られるかと言うと、そうではない。組織の中で誰に気に入られるかといったテクニックを身につけなければならない。そうした技術は外に出たら意味がない。「だったら3年でいいや」という合理性が、若い人の間にある。

 ◆中里裕史・BloomScheme(ブルームスキーム)CEO (起業に)経済的合理性が出てきたと言える。起業して生活していけるし、うまくいけばたくさんお金が入る。起業のコストが下がり、以前は、300万円集めなければいけない、工場で何かを作らなければならない、といった制約があったが、今はそうではない。現代に生まれて良かったなと思う。

 ◆小林 仮に起業して失敗したとしても、(会員制交流サイトの)フェイスブックで「失敗した、仕事探しています」と書き込めば、次の仕事を友人から紹介してもらえる。そうした人脈があるかないかも大きい。

ブルームスキームの中里裕史CEO=東京都千代田区で2018年12月26日、小川昌宏撮影

 ◆中里 逆に大企業にいることの不安もある。IBMに在籍したときは、自分が(仕事を)コントロールできないので、人生で最も不安な時期だった。起業した後のほうが不安は少ない。

死ぬほどのことはない

 ――起業というと、資金繰りなどに苦しむというイメージがありますが。

 ◆小林 人間は生きている限り何かに不満を持つ。上司が気にくわないという不満よりも、自分で資金繰りをしなくてはいけないといった重圧の方が、悩みとしては良い。不安になると筋力トレーニングします。

 ◆中里 同じです、最近始めました。筋トレすると悩まない。多分セロトニンなど、脳内物質の分泌がよくなるのでは。

 ◆桂 私は不安になるというより、いつもなんとかなるかなと思っている。出産を4回経験しており、出産の度に「死んでしまう」と思ったので、それに比べればたいしたことはない。ただ、(会社員で共働きだった時代でも家計が)「危なかった」ということは過去何回かあって、4人の子どもの教育費をどうしよう、正月を越せるかな、とか。でも大丈夫だった。私は「駄目」というイメージが逆にわかない。駄目になるとはどういう状況かをイメージすると、死ぬこと以外はない。死ぬほどのことはそうそう起こらない。子どもが可哀そうにならなければいい。仕事をクビになっても転職はできそうだし、やり方を常に探すのが起業なので。

「辞めたい」なら辞めればいい

 ――就職活動をして年功序列の大企業に入る学生をどう思いますか。

 ◆桂 多様性疲れ、かなと思う。今の時代は、ここに乗っかれば安泰といったものが就活ぐらいしかない。結婚しても離婚する人がいて子育ても大変だ。大企業に入れば福利厚生がしっかりしていて収入が65歳まで保障されるとなれば、それに乗っかりたいという気持ちは理解できる。世の中のほとんどの人は、起業家マインドがない。そういう人が起業しろ起業しろと言われてもつらいだけ。

 ◆小林 周りに起業家マインドがある人は少ない。私自身は、就活は嫌だな、と思った。スーツを買わなければいけないし、特に気にしたことのないビジネスマナーも気にしなければならない。起業した会社を売ってお金をたくさん持っている友人がいて、「企業で働いていられない」「負けてられないな」と思った。大手企業に就職した友人も3日目には「辞めたい」と言っている。辞めたいというのを聞くと辞めればいいと思う。

 ◆中里 私が大学を卒業した時代には、同世代には起業家は多くはなかった。

 ◆桂 私の大学卒業時も周りにはいなかった。私は能動的に起業を選択した、あの世代では少数派の一人だと思う。他の人のほとんどは、消去法で人生の選択をしていた。大学も、受験して受かりそうなところにいくとか。女性は人生の中で選択肢がとても多い。私は新卒で入社した会社で、24歳で妊娠したが、まず産むかどうかを選択することになった。その時、「会社とは何だろう」と考えた。子どもを産むかどうかは私の選択で、会社がその選択に対して責任を持ってくれるわけではないのに、なぜ会社のことを考えなくてはいけないのかと。

 妊娠すれば、会社は「こっちのコースね」と、いわゆる「ママトラック」に乗せてしまう。私は「ママトラックには乗りません」と宣言して第一線で働き続けたが、ほかの人は譲歩してしまう。「勤めきれるか分からないから」と第一線から異動する。それが私には理解できなかった。自分の人生なので「私がこうしたいです」と会社に主張して用意してもらえばいいのに。今の20代は、逆にきちんと主張しないと会社で生き残れない。

 ◆中里 私は自分で人生をコントロールしたいから起業した。使われたくないというよりも私が右だと考えたのに左にいかなきゃいけないというのが好きではない。一方、他者から受けた指示を黙々と実行する人たちを否定するわけではない。それぞれが自分の気質に従って、互いに補完しながら生きれば良い。(続く)


ventusの小林泰CEO=東京都千代田区で2018年12月26日、小川昌宏撮影

ventus(ベンタス)CEO 小林泰(こばやし・ゆたか)

 千葉県出身。東京大卒、東大大学院に在学中。大学在学中はアイスホッケー部の副将を務め、現在は日本アイスホッケー連盟国際専門部会委員の肩書も持つ。25歳。

 ventus 東大の学生が中心となって2017年に創業したスポーツ・エンターテインメント分野のスタートアップ。スポーツチームがファンから資金調達できる電子トレカ売買サービス「whooop!」を開発した。川崎フロンターレなどサッカーJリーグチームやバスケBリーグなど、すでに50を超えるスポーツ団体と連携が決定している。

ブルームスキームの中里裕史CEO=東京都千代田区で2018年12月26日、小川昌宏撮影

BloomScheme(ブルームスキーム)CEO 中里 裕史(なかざと・ゆうし)

 東京都出身。慶応大卒、一橋大大学院修了。09年IBMビジネスコンサルティングサービス(現IBM)入社。フリーランスのコンサルタントを経て現職。32歳。

 BloomScheme 店舗での「試着」から着想を得て起業したスタートアップ。スマホ上で、自分の分身となるキャラクター(アバター)に瞬時に大量の試着、新たなヘアスタイル、メークを試すことができるアプリを開発した。ユーザーはスマホカメラで顔の写真を撮ってアプリに登録し、自身の身体のサイズも入力し、アバターに反映できる。

MODALAVAの桂茉利子CEO=東京都千代田区で2018年12月26日、小川昌宏撮影

MODALAVA(モダラバ)CEO 桂Jasmine茉利子(かつら・じゃすみん・まりこ)

 東京都出身。米カリフォルニア州立大で国際ビジネス専攻。帰国後はITコンサルタントを経て現職。35歳。2男2女の母。

 MODALAVA 写真共有アプリ「インスタグラム」で、投稿にハッシュタグを付けて出品、またはイベントに商品を持ち込んで参加できるフリーマーケットを展開。モダラバと契約した出品者が、インスタで売りたいファッションのコーディネートを指定し、同社EC(電子商取引)サイトに掲載される仕組み。商品は2000円均一で取り扱う。

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 過激ゆるキャラ「ちぃたん☆」に頭抱える高知・須崎市 「観光大使」自称 
  2. 広河氏「セクハラ、立場を自覚せず」 写真界の「権力者」暴走の背景は?
  3. デルタ航空、福岡・ハワイ線撤退へ
  4. ミニスカ「性犯罪誘う」に批判 菅公学生服が不適切表現を謝罪
  5. 高知・須崎市、1年でふるさと納税300倍 成功の裏にゆるキャラと“名演出家”

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです