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社説

次の扉へ 人口減少と日本社会 2040年代への準備は万全か

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 日本の直面している最重要課題は少子高齢化に伴う人口減少である。

     65歳以上の高齢者は現在約3500万人だが、2042年には今より約400万人も多い3935万人となる。一方、現役世代(15~64歳)は1995年の8726万人をピークに減り続け、40年には約6000万人にまで落ち込む。

     これまでは団塊世代が75歳を超える25年に向けた社会保障改革が議論されてきたが、高齢化のピークは「団塊ジュニア」と呼ばれる世代が65歳を超える42年である。

     政府は昨年、初めて40年代までの社会保障費の試算を発表した。18年度の社会保障給付費の総額は121・3兆円(国内総生産=GDP=比21・5%)だが、40年度には約190兆円(同24%)になる。

     これだけ巨額の財源をどうやって確保できるのだろうか。40年代に照準を合わせた長期的な財政と社会保障改革のビジョンが必要だ。

    国民生活が破綻の危機

     安倍晋三首相は年頭記者会見で「今、我が国では少子高齢化が急速に進んでいる。正に国難とも呼ぶべきこの課題に、現代の私たちは真正面から向き合い、未来への改革を進めなければならない」と述べた。

     しかし、これまで安倍政権が本気で少子高齢化に「真正面」から向き合ってきたとは言い難い。

     これまでも社会保障費の財源を調達できず、借金をしてやり繰りしてきたのが実情だ。国と地方の長期債務は現在1107兆円を超えた。世界でも類を見ない巨額の債務で、GDPの2倍近くにも上る。このままでは40年には2700兆円にまで膨らむという試算もある。

     財政への信頼が失墜すると長期金利が高騰し、国債を大量に抱える金融機関に含み損が生じて金融システムが機能しなくなる。政府の資金調達も困難になり、借金して社会保障費の穴埋めをすることもできなくなる。国民生活の破綻だ。

     「元気で長生きできる社会をつくれば、人口が減少しても経済を成長させていくことができる」と安倍首相は述べる。しかし、国民は財政破綻や社会保障への不安から老後のために預貯金をするばかりで、なかなか消費は喚起されない。GDPの6割を占めるのは個人消費である。

     少しでも早く財源確保の方策を示し、社会保障の信頼を取り戻さなければならない。医療や介護の現場の効率化や省力化を進めることも必要だ。10%への消費増税時に景気対策としてバラマキをするのは、抜本的な改善策に逆行するものだ。

     働く意欲のある人は65歳を過ぎても働き続けられるよう雇用制度を改革し、企業の取り組みも促すべきだ。医療や介護を必要としない「健康寿命」は延びている。支えられる層が支える側に回れば社会保障の財政に好影響を与えることができる。

    地方再生がカギを握る

     将来の人口減少の速度を少しでも緩和する政策も必要だ。

     大都市の出生率は時代や国を問わずに低い。17年の東京の出生率は1・21で、全国平均の1・43を大幅に下回る。以前から東京の人口は地方からの新たな流入によって維持されてきた。

     現在の問題は、もともと出生率が高かった地方が衰退して現役世代が減っているところにある。働く人を都市部へ送り出してきた「供給源」の消失である。

     地方の経済を支えてきた農林水産業や製造業も深刻な働き手不足に陥っている。政府が取り組んでいる外国人労働者の受け入れ拡大は、地方の産業界の悲鳴に応えるものだ。当面の対症療法にはなるだろう。

     しかし、日本全体で進んでいる人口減少にはほとんど効果がない。

     これまで各地の自治体は企業の誘致や大学の開設などを行ってきたが、衰退の流れを止めることは容易にはできない。

     現役世代の定住を進めるためには、仕事を生み出すだけでなく、安心して住み続けたくなる魅力のある町づくりが求められている。

     子どもの保育料や医療費の無料化、保育所の整備などを積極的に行い、若年層の移住や出生率の向上に成果を上げる市町村も出てきた。

     今、生まれてくる子どもたちは40年代には社会を支える側の年齢に達する。政府が掲げる「全世代型の社会保障」はこうした自治体の取り組みと連動したものであるべきだ。

     人口減少を緩和するため地方の再生に全力を挙げなければならない。

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