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岡崎 武志・評『鶴見俊輔伝』『青木雄二漫画短編集』ほか

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今週の新刊

◆『鶴見俊輔伝』黒川創・著(新潮社/税別2900円)

 東京市長などを務めた祖父、政治家・流行作家の父を持ち、中学生で色恋に溺れる不良。ハーバード大に留学、太平洋戦争開戦後に交換船で帰国、やがて思想家に。そんなウソみたいな経歴の男がいた。

 黒川創『鶴見俊輔伝』は「ウソみたいな」生涯を、まっとうに位置づける労作。祖父・後藤新平から筆を起こし、3年半前の逝去まで、鶴見俊輔はいかに考え、いかに歩んだかが克明に叙述されている。漫画や漫才からプラグマティズムまで、仕事量の幅も広大なだけに、大変な著作となった。

 ほかの思想家、哲学者と違うのは、雑誌『思想の科学』を牽引(けんいん)し、ベ平連、九条の会など、鶴見は徹底して行動する人だった。その陰で多年「ウツ」に苦しんだ。クセ球で捕手は受けにくいが、著者はそれを直球で受け止めた。

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