工藤 美代子・評『日本の伝説 東北・北海道』藤沢衛彦・著
地獄に行った人のために祈るのは、自分のためでもあるかもしれない
◆『日本の伝説 東北・北海道』藤沢衛彦・著(河出書房新社/税別2100円)
伝説。とにかく、この言葉が好きだ。いや、伝承でもいいし、神話でもいい。理性では割り切れない話にはいつでも興味をそそられる。
本書は藤沢衛彦(もりひこ)が昭和30年9月に刊行した『日本民族伝説全集3〈東北・北海道篇〉』を復刊したものである。もちろん、読みやすいように、新漢字にしてルビを補っている。全9刊で、これが3冊目。すべて刊行されたら、日本全土にわたる424の伝説がカバーされるという。そう聞いただけで、やっぱり老後の楽しみはこれしかないだろうと思った。
なにしろ、『古事記』も『日本書紀』もちゃんと読んだことのない不勉強者だ。しかし、スルメをちょっと齧…
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