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検証・災害列島

/3 公立校9割が避難所 盲点、強風対策急務

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 「体育館の屋根が飛んでいる!」。台風21号が近畿を襲った昨年9月4日午後、大阪府摂津市の市立鳥飼西小で若狭孝太郎校長(56)は信じられない光景を見た。風圧で重くなった体育館の扉を必死で開けると、天井に開いた穴から風と雨が激しく吹き込んでいた。屋根は約5分の2がはがれていた。

 自動車やトラックが横転し、電柱や街路樹が倒れる。屋根や看板が建物からはがれ、宙を舞う--。

 昨年の台風21号は25年ぶりに非常に強い勢力のまま四国や近畿に上陸し、各地で最大瞬間風速の観測記録を更新した。飛来物がマンションの窓を突き破って住民を直撃するなど14人が亡くなり、建物被害が続発した。

 私たちは地震や津波、豪雨への備えにばかり気を取られ、強風を軽視していなかったか。今こそ検証が必要だ。

 台風21号による学校施設の被害は全国約2500校に及び、大半は強風が原因だった。文部科学省によると、公立学校の92・1%は災害時の避難所に指定される。国は大地震に備え学校施設の耐震補強を推進し、2018年度の調査で耐震化率は98・9%に達した。

 だが、強風対策は置き去りにされた。指定避難所の基準は災害対策基本法で「想定される災害による影響が比較的少ない場所」としか記されない。避難所環境についての内閣府の指針や、災害に強い学校施設のあり方を議論した文科省の有識者会議の報告書は、耐震性や耐火性に重点が置かれ、強風対策には触れていない。

 同小には身体の不自由な高齢女性ら2人が訪れ、風の影響が最も小さい相談室で自主避難していた。若狭校長は「体育館に誘導していたら、と考えるとぞっとする。地震や水害には備えてきたが、風は意識しなかった。学校が安全な場所という考えは改めなければならない」と話す。

 世界的には、自然災害の中で強風が最も経済損失が大きい。国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が昨年10月に発表したデータによると、17年までの20年間にハリケーンなど暴風による損失は全世界で計1兆3300億ドルに達し、自然災害による経済損失全体の46%を占めた。

 台風21号でも、大阪府を中心に約5万棟の家屋が損壊し、低気圧で上昇した海面に強風が吹きつけて発生した高潮により沿岸部で多数のコンテナや自動車が流出した。関西国際空港の滑走路も浸水して一時閉鎖するなど、社会基盤は大きな打撃を受けた。

 関西電力の管内では延べ約220万戸が停電し、復旧に17日間を費やした。1995年の阪神大震災時の延べ約260万戸に次ぐ規模だ。時速144キロに相当する風速40メートルの強風に耐えるはずの電柱も約1340本が倒壊した。設計基準より弱い風でも、倒木や飛来物が電柱や電線に当たり、倒れたとみられる。強風対策は電線を地中に埋める「無電柱化」が有効だが、コスト面などで課題が多く、関電は停電の早期復旧に重点を置く。

 さまざまな研究が、温暖化により台風が大型化すると予測する。京都大防災研究所の丸山敬教授(建築耐風工学)は「大型化した台風が都市部を直撃すると、強風に加えて高潮、土砂災害なども発生する複合災害も懸念され、相当深刻な状況に陥る」と警鐘を鳴らし、「公共施設の定期点検、住宅の雨戸の設置、屋根のメンテナンスなど地道な取り組みが、社会全体での被害軽減につながる」と指摘する。【岡崎英遠】=つづく

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