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検証・災害列島

/4 役立った地区避難計画 住民が主体的防災

松山市五明地区の地区防災計画について説明する自主防災組織役員の吉金茂さん=松山市で2018年12月16日、久保聡撮影

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 「避難が全町で約10人とは……」。愛媛県伊方町の防災担当職員が嘆く。昨年7月の西日本豪雨で全町民約9500人に自主避難を呼びかけたが、わずかしか応じなかった。

 伊方町は、県内で被害が集中した南予地域に位置する。同町でも7月5日からの4日間で計321ミリの雨が降り、土砂崩れや倒木が相次いだ。町は7日午前8時20分、全戸に配備する防災行政無線などで全町民に自主避難を呼びかけた。

 避難者の少なさに、町はショックを受けた。全55地区に自主防災組織はあるが、防災意識が低いと避難に結びつかない。そう思い知らされ、町は昨年9月、住民主体の「地区防災計画」作りを通して意識を高めようと、自主防災組織の代表者全員を集めて策定を促した。

 防災に有効な手立てとして、地区防災計画制度への期待が高まっている。従来は国と都道府県、市町村のみが防災計画を策定する枠組みだったが、2013年の災害対策基本法改正で新設された。地区の状況に応じた計画を住民自らが定める。東日本大震災で行政も被災し、機能がまひした教訓から、自発的な防災活動で地域の防災力を高める狙いだ。

 西日本豪雨で地区防災計画が役立った例がある。松山市東北部に位置する五明(ごみょう)地区。標高300~500メートルの山間部にあり、7集落に計約450人が暮らす。

 7月6日夕方から雨脚が強まり、自主防災組織メンバーらが「避難を促そう」と決めた。前年に策定したばかりの地区防災計画に基づき、集落ごとに独自の一時避難所を開設。市の避難情報発令を待たず午後8時ごろから計画通りに住民に避難を呼びかけた。

 約1時間後、市が避難準備・高齢者等避難開始を発表した時は、既に数十人が避難所に移っていた。地区内で住宅被害はなかったが、数カ所で土砂崩れが起き、県道も寸断された。

 その五明地区も、3年前は状況が違った。自主防災組織の役員を務める吉金茂さん(62)は「一歩間違えば大惨事になっていた」と振り返る。

 各地に記録的な雨をもたらした15年7月の台風11号。同地区も約30カ所で土砂崩れが起きた。避難勧告が発令されたが、避難者は4人だけ。多くの住民は自主防災組織の調査に「過去に被災経験がなく大丈夫だと思った」と答えた。吉金さんは「避難意識の低さが問題だった」と話す。

 同年9月、地区防災計画の作成を始めた。土砂災害の危険箇所などを確認し、防災マップも作成。全世帯に「防災調査票」の記入を依頼し、自力避難が可能か、看護師や介護士がいるか、家族の寝室の位置などを把握した。的確な避難や救助に生かすためだ。

 吉金さんは「災害対策を自分の事として考え、自分の命は自分で守る、みんなの命はみんなで守るという意識を持つようになった」と説明する。

 内閣府によると、昨年4月までに全国40市区町村の248地区が地区防災計画を策定し、約3400地区が策定を進めている。だが、30万以上とされる全国の地区数と比べるとわずかな数だ。

 地区防災計画学会理事を務める香川大の磯打千雅子(ちかこ)・特命准教授(地域防災)は「地区防災計画を知っている人はまだまだ少ない。地区防災計画で地域の状態や課題が見え、住民が主体的に防災を意識するようになる。計画は復旧・復興のまちづくりにも生きる。周知が進んでほしい」と話している。【久保聡】=つづく

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