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社説

稀勢の里引退と相撲界 層の薄さをいかに補うか

 大相撲の横綱・稀勢の里が現役を引退した。2017年初場所後、19年ぶりに誕生した日本出身横綱は約2年でまた不在となった。寂しく感じる相撲ファンは少なくなかろう。

     稀勢の里は15歳で角界入りした「たたき上げ」だ。今後、こうした力士はますます減るだろう。何より、力士を目指す若者の減少傾向に歯止めが利かない実情がある。

     若貴ブームに沸いた1990年代前半、新弟子の数は年間200人を超えたこともあったが、近年は70~90人程度で推移する。全盛期の半分以下という落ち込みである。

     少子化が進行していることも一因だが、大相撲という世界に足を踏み入れようと考える子どもも親も少なくなったことが一番の理由ではないだろうか。

     大相撲の部屋制度では、弟子たちは生活を共にし、稽古(けいこ)に励む。「無理へんにげんこつと書いて兄弟子と読む」という言い回しがあるほど上下関係は厳しい。番付も絶対だ。

     古い徒弟制度にも似た社会が敬遠されるのは、時代の流れと見るほかあるまい。

     先月の貴ノ岩による付け人暴行のような、上下関係を元にした暴力体質が根強く残っていることも影を落としている。角界が暴力といかに決別するかは新弟子の減少を食い止める大きな要素になるはずだ。

     力士全体の層が薄まる傾向を補い、大相撲の発展に寄与してきたのが外国出身力士である。約660人という力士の総数から見れば外国勢は約5%に過ぎないが、十両以上の関取になると2割以上に上る。

     公益財団法人・日本相撲協会は、神事であり国技である相撲道の伝統と秩序を維持し、発展させることを目的とする。

     単に勝ち負けを争うスポーツでなく、伝統文化の伝承者としての使命も担うのである。となれば、国際化の流れは当然としつつも、日本出身力士の奮起も期待される。

     けがをした稀勢の里の復帰を気長にファンが待ったのも、「気は優しくて力持ち」との日本人好みの力士像を横綱に重ね合わせたからだ。

     層が薄くなる中でも力士のレベルをどう保っていくのか。これからの角界は、そういう大きな課題と向き合っていかねばならない。

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