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晴レルデ

おもい-つくる/7 泣いた分だけ、強く

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 マリさん(築山万里子さん)と父の敬志朗さんは、仕事の進め方とかスタッフの統率とかの流儀が全然違う。怒ったことがなかった敬志朗さんに対して、「むっちゃ怒る」というマリさん。スタッフも「お客様や工場に迷惑をかけることには、よう怒られます」と打ち明ける。もっとも、年末にマリさんは「せんど言うてきたんで、もう怒りません」と言うてたけど……。

     そんな親子に共通しているのは、アサヒ精版印刷に入る気がなかったというところだ。もともとマリさんは、短大を出てファッション業界で働いていた。3年たって行き詰まりを感じ、バイト感覚でアサヒ精版に身を置いた。

     「ほとんど何も教えられませんでした。上司も初めからずっといないし」。パパの放任主義は筋金入りだ。印刷営業が担当で、宮業も納品も1人で駆けずり回った。24歳で制作チームと組んだ仕事を任された。カメラマンやデザイナー、コピーライターなどの力夕力ナ職業の人種との初仕事。「お前が仕切れと言われて、小娘なのに名刺には『プロデューサー』。うさんくさいでしょ」。確かに……。

     その後、通販化粧品の販促の仕事で、同世代のコピーライター、村上美香さん、イラストレーターの仲里力ズヒロさんと組むことになる。3人の制作チームでマリさんは宮業担当。「自分は何もクリエイティブなことはできないので、お客様のイメージに添うモノを2人に発注するという立ち位置で」と振り返るが、美香さんに聞くと、最初からそんなカッコいいことではなかったようだ。

     「営業から戻ってさて、私たちに報告する時に『きょう聞いてきたことは、え一と、なんやったかなあ』って半分泣いてるんですよ。それじゃ全然わからんやん!何をどう伝えたらいいか、混乱していたんでしょうね」

     という話をマリさんにぶつけたら、「そうですね。絵も描けない、文章も書けない。話は聞いてくるけど、うまく説明できない。よく泣いてました。美香さんに『よしよし』って。ヨチヨチ歩きを支えてもらいました」。スタッフを怒るマリさんにも、たぶん誰しもにそういう時代があるのだ。それを肥やしにするか、肥だめに落ちて終わるかは、本人次第だ。

     力タカナ職業の一癖も二癖もある人たちと交わるうちに、現場でもまれてマリさんは強くなっていった。仕事もレベルが上がっていく。グラフィックデザイナーから印刷物を受注する。まず普通の印刷物ではない。「紙とデザイン、印刷技術を組み合わせると、いろんなものができるんですよ」

     そんな1999年ごろ、アートディレクターの林功一さんとの仕事でのことだった。ジュエリーブランドのイメージブックの奥付に、林さんがマリさんの肩書を英語で「プリンティングディレクター」と入れてくれた。「元は製版のプロのことなんで、いいんですか?って聞いたら、『築山さんの仕事って、英語で訳すとそういうことちがうかな』と言ってくださって。目からうろこで、すぐに名刺に入れることにしたんですよ」

     林さんはメールでこう振り返ってくれた。「僕の過酷な要求に、人柄とアイデア、類いまれなバイタリティーで対応してくれた築山さんは、僕の中では印刷屋さんではなくて最初からディレクター。僕のすべての作品は築山さんなしでは考えられません」<文・松井宏員 デザイン・シマダタモツ>

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