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社説

元徴用工に被爆者手帳 認定基準の柔軟な運用を

 戦後73年が過ぎ、被爆者の救済が時間との闘いであることを行政は十分に認識すべきだろう。

     造船所に徴用されて被爆したとして90代の韓国人3人が被爆者健康手帳の交付を長崎市に求めた訴訟で、長崎地裁は市に交付を命じた。

     被爆の証人や直接的な証拠はなかったが「発言の内容が一貫しており具体的で、信用性が高い」と判断した。これまで申請を却下していた市は控訴の断念を表明した。

     被爆者の証しである手帳は広島、長崎で直接被爆したり原爆投下後2週間以内に入市したりした人に自治体が交付し、医療費は全額給付される。交付を求める人は少なくない。

     だが、その際には行政からは厳しく裏付け証拠を求められるため、証拠がない場合の認定のハードルは高くなってしまう。1957年の厚生省(当時)の局長通達では、原則として2人以上の証人の証明書や被爆地にいたことが分かる手紙や写真などのいずれかの添付を求めた。

     このため、多くのケースが訴訟に持ち込まれてきた。直接的証拠がなくても交付を命じた例は2012年の長崎地裁判決でもあった。だが今回の判決は「70年以上が経過し、記憶が減退したり証拠がなかったりしても不自然ではない」とし、「証拠がないことで発言の信用性が否定されるとはいえない」と踏み込んだ。

     年月がたつほど証人は亡くなり、証拠も少なくなる。説明に一定の信用性があれば、認定していく判断は妥当だろう。とりわけ、証人探しが難しい韓国など在外の被爆者にとって意義は大きいはずだ。

     手帳交付を求めた訴訟は他にも起こされている。広島地裁では、原爆による黒い雨を浴びたとして80人以上が提訴し、国が決めた援護対象区域の範囲が争点となっている。

     厚生労働省によると、被爆者の平均年齢は82歳を超えた。昨年度の申請件数は392件あったが、交付が認められたのは122件で、認定される割合は年々減っているという。

     元徴用工を対象とした判決だったが、行政は速やかな救済に向けて、広く今回の地裁判断に準拠した柔軟な審査をすべきではないか。「証人が見つからない」という理由で申請を諦める人がなお数多くいる現実を直視すべきだ。

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