- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
厚生労働省は「地域医療の核となる医療機関の勤務医」の残業時間の上限を、「年1900~2000時間」とする案をまとめた。
過労死の労災が認められる目安は年960時間なので、その2倍まで認めることになる。一般労働者の基準からかけ離れた案であり、容認できない。
勤務医の長時間残業は常態化している。にもかかわらず是正の動きは鈍い。厳しい上限を定めると病院の運営に支障が出ることを懸念する医療界の反対が強いためだ。患者の立場からすれば、急に医師の残業時間を制限すると、必要なときに病院で受診できなくなる恐れがある。
しかし、過労やストレスで毎年70~90人の医師が自殺していることを重く受け止めなければいけない。病死も含めると毎年100人もの医師が過労で死亡している。特に若い研修医のメンタルヘルスに関する調査では、4割程度が抑うつ状態にあるという調査結果がある。
それなのに、厚労省案では「専門性や技能などを高めようとする若手医師」については、「検討中」として残業時間の上限を提示することすらできなかった。
しかも「年1900~2000時間」は2035年度までの暫定措置とし、36年度以降は一般勤務医と同様年960時間にするという。暫定措置を長期間続けるのは許されない。段階的にでも改善すべきだ。
医師は検査や治療だけでなく、診療報酬に関する事務、患者や家族への対応などにも多くの時間を割いている。事務職や医療ケースワーカーにもっと仕事を委ねるべきだ。
高齢化に伴い、複数の慢性疾患を持った高齢の患者が多くなっている。米国では医師不足から単純な医療行為を行えるNP(ナースプラクティショナー)という上級看護師の制度がある。日本でも看護師の役割をもっと広げるべきではないか。
患者の意識を変えることも必要だ。小児科の救急外来を受診する9割が入院の必要ない軽症の患者という調査結果もある。特に夜間や休日の対応で医師は疲弊している。
緊急に治療が必要かどうかを判断する電話相談などの充実も有効だろう。さまざまな方策を駆使し、医師の負担軽減を図るべきだ。