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社説

日露首脳の領土交渉 これで展望が開けるのか

 戦後74年にわたり解決できていない北方領土交渉が、動き出しそうな手応えはなかった。安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が臨んだモスクワでの首脳会談である。

     両首脳は「相互に受け入れ可能な解決策」を目指すことで一致した。だが、具体的な進展を示すことばは聞かれなかった。両国が納得する解決策が何かも見えてこない。

     1956年の日ソ共同宣言を交渉の基礎にすることで合意した昨年11月の会談から3回目だ。なのに認識の違いはむしろ広がっている。

     首相は6月の大筋合意を目指す意向といわれるが、この先に展望が開けるとはとても思えない。

     際立つのはスピード感の違いだ。「できるだけ進展させたい」と協議の加速を狙う首相に対し、プーチン氏は「環境作りに長く地道な作業がある」と語り、ブレーキをかけた。

     プーチン氏は年金改革や経済低迷で支持率が低下している。これに、領土引き渡しへの批判が高まり、抗議集会が開かれる事態になった。

     共同宣言には平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すと明記されている。だが、その解釈が共有されているとも言いがたい。

     ロシアは北方四島の領有権を主張し、プーチン氏は2島の引き渡し後の主権のあり方も問題にしている。国内世論への配慮もあるのだろう。

     首相は「北方領土は不法占拠されている」との政府見解の明言を拒んでいる。ロシアの世論を刺激せず、静かに交渉を進めたいようだ。

     しかし、「日本固有の領土」とすら言わない政府の態度は、日本国内での不信につながっている。ロシアの日本への要求が弱まる気配もない。日本の戦術が交渉を後押ししているようには見えない。

     それでも首相は前のめりの姿勢を変えていない。2月に日露外相会談を開き、交渉を「さらに前進させる」よう指示したという。

     プーチン氏が優先するのは領土問題の解決よりも、経済的な関係を強化することではないか。今回の会談では今後数年で貿易額を1・5倍に増やすことを決めた。平和条約を締結すれば一段の拡大が見込める。

     領土問題解決への感触も得られぬままロシアペースで譲歩を強いられるなら、国益にはならない。

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