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社説

勤労統計不正の調査 幕引きせずに資料開示を

 厚生労働省の担当者の言い分を聞いただけで、その信用性についての裏付けや具体的なデータの開示もない。全容の解明には到底及ばない調査と言わざるを得ない。

     毎月勤労統計の不正調査問題で、弁護士や学識者らの特別監察委員会が公表した報告書である。

     厚労省は事務次官を含む22人の処分を発表した。早期の幕引きを図る政府の思惑が透けて見える。

     勤労統計は従業員500人以上の事業所をすべて調べることになっているが、同省は2004年1月から東京都の約1400事業所のうち、無断で約3分の1を抽出する調査に切り替えた。しかも、抽出調査のデータを補正しなかったため不適切な数値が15年間も続いていた。

     「事業所から苦情が多く、都道府県からの負担軽減の要望を踏まえた」と報告書は職員の動機を示した。

     しかし、東京都側は要望したことを否定している。委員会は都や事業所の聞き取りをしていない。それなのに「組織的な隠蔽(いんぺい)は認定できなかった」と言う。わずか1週間の調査で解明すること自体が無理だ。

     そもそも抽出した約500社がどのような規模の会社で、どうやって選んだのかがわからないと不正の恣意(しい)性が判断できない。野党側は元のデータや約500社の情報を国会に提出するよう求めている。

     厚労省は昨年1月に補正した数値に切り替え、そのことを公表しなかった。この補正の結果、昨年の賃金水準は上がった。賃金上昇をアベノミクスの成果としてきた安倍政権の主張と符合する。

     ところが、補正可能な12年以降のデータを再計算すると、昨年の賃金の伸び率は最大0・7%下方修正される。不適切な調査や補正が何らかの意図で行われたのではないかと疑われかねない。

     報告書では、昨年1月の補正で担当室長が数値の変動を「誤差の範囲」と思い公表しなかったとした。問題の核心部分である。もっと詳細な経緯の説明が必要だ。

     勤労統計は国内総生産(GDP)の算定根拠になるほか、さまざまな政策や企業活動に影響を与える基幹統計の一つだ。

     未解明な疑問はほかにも多数ある。徹底した真相解明が求められる。

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