SUNDAY LIBRARY

岡崎 武志・評『花折』『京都「私設圖書館」というライフスタイル』ほか

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今週の新刊

◆『花折』花村萬月・著(集英社/税別1800円)

 『花折(はなおれ)』の帯文を読んで驚いた。著者・花村萬月は、白血病と闘っているという。そのさなかに書かれた長編小説は、全編に性愛が満ちたエネルギッシュな作品だ。

 「私は逆子だった」という一文で語り出す「私」鮎子は、著名な日本画家を父に持ち、京都で暮らす。彼女も早熟な絵の天才で、東京藝大に進学するが、運命的に出会った男性イボテンと際限なく睦(むつ)み合う。その後イボテンは自殺。鮎子は京都、沖縄と、出会った男たちと次々に関係を持つ。

 他の男と交わりながら、しかし彼女は死者のイボテンに支配されていた。それを「純愛」と呼ぶ。克明な性愛描写は、一種求道的であり、鮎子が絵の世界で探し求めるものと重なっているようだ。そして沖縄の遊郭で、鮎子は老いた娼婦(しょうふ)たちを絵の題材に選ぶ。連作のタイトルは「花折」だ。

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