毎日新聞
負のスパイラルが、さらに深刻化してしまいかねない。
約4カ月ぶりに河野太郎、康京和(カンギョンファ)の日韓両外相による会談が行われた。日韓間では昨秋以降、韓国最高裁による日本企業への賠償命令や慰安婦財団の解散、レーダー照射問題などが重なり、緊張が高まっている。国民感情が急速に冷え込む中での対話となったが、平行線に終わった。
徴用工問題では、河野氏が日韓請求権協定に基づく政府間協議に応じるよう改めて求めた。これに対し、康氏は検討中と述べる一方、司法の判断を尊重するという基本的立場を強調したという。
判決を重視する文在寅(ムンジェイン)大統領は、韓国政府が問題解決を主導することに否定的だと言われる。
朴槿恵(パククネ)前政権時代の最高裁長官が徴用工訴訟の判決先送りなどを指示したとして逮捕される事態にも発展した。このことから、日本に配慮した政治判断は世論の支持が得られないと考えているようだ。
しかし昨秋以降、日本企業への賠償判決は相次いでいる。韓国政府の姿勢は対日関係の悪化を放置していると言わざるを得ない。
また、韓国国防省は海上自衛隊哨戒機による「威嚇飛行」があったと主張し、康氏は会談で遺憾を表明した。先に防衛省がレーダー照射問題で最終見解を発表したのは、両国の安全保障協力の再構築を図る意図があったのに、対立をあおるような韓国側の対応は理解に苦しむ。
3月には、日本の植民地時代の大規模な独立運動「3・1運動」から100年を記念する日が控える。文政権は民族感情を前面に押し出しかねず、日本側を刺激するメッセージを発しないか懸念される。
表向きは未来志向の日韓関係構築をうたいながら、国内政治を優先しているのが実情である。こうした文氏の姿勢に日本で失望感が広がっていることを認識してほしい。
2月下旬に予定される2回目の米朝首脳会談を前に、韓国は南北関係の改善に注力している。日本との温度差は広がる一方で、情報共有もままならない状態だ。
日韓という重要な隣国関係が悪化することが、本当に両国のためになるのか。双方のリーダーは考え直すべきだ。
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