外国人労働者の受け入れ拡大が4月に迫っているにもかかわらず、政府の説明は依然具体性を欠き、準備不足の懸念が残る。
昨年末に成立した改正入管法について、衆院と参院の法務委員会で閉会中審査が行われた。
注目されたのは、外国人との共生を掲げ政府がまとめた「総合的対応策」についての答弁だ。対応策は、外国人支援策を柱とするもので、医療や生活サービス、社会保障など126項目に及ぶ。
野党側は、そのうち地方自治体が担う施策の数や負担額を聞いた。だが、法務省からは数字を挙げての明確な答弁はなく、山下貴司法相は「自治体側と協議をしながら情報共有を進めたい」と述べるにとどまった。予算措置を伴うだけに自治体側の関心は高い。この答弁では非常に心もとない。
今回、支援策の目玉と政府が位置づけ全国100カ所の自治体に設置を目指すワンストップの相談センターにも懸念が残る。
設置主体は自治体で、政府は交付金による財政支援を行うという制度の仕組みになっている。
だが、設置自治体や時期などは依然、決まっていない。政府はセンターでの多言語対応実現を掲げたが、そのハードルは高い。教育や医療の現場で多言語対応に取り組んできた地方の自治体は、通訳など人材確保の難しさを訴えている。
多くの南米出身の日系人を受け入れた1990年の入管法改正では、政府は日本語教育や住宅支援などほとんどの政策を地方自治体に委ねてきた歴史がある。再び自治体側に対応を丸投げするのではとの疑念は拭えない。
答弁では、「政府が支援する」という言葉が多用された。だが、通訳不足に代表されるような中央と地方の格差が大きい課題は、むしろ政府が主導して解決を図るべきである。
改正入管法の国会審議を巡っては、法務省令に委ねる部分が多い点を踏まえ、大島理森衆院議長が全体像を改めて国会に報告するよう政府・与党に求めた経緯がある。
今回の閉会中審査では説明不足の解消には至らなかった。政府は先送りした課題について早急に具体策を示すべきだ。
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