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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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奈良時代、鎌倉時代、江戸時代のように政権の所在地を…

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 奈良時代、鎌倉時代、江戸時代のように政権の所在地を時代の名にするならば、豊臣秀吉(とよとみひでよし)が大坂城で政務をとった時代は「大坂時代」にすべきだ--阪大教授だった歴史学者の脇田修(わきた・おさむ)さんはそう提言していた▲実は江戸時代の初期にも大坂に幕府を移す構想があったのを示す史料が見つかったという。大坂城再築にあたった茶人・小堀遠州(こぼりえんしゅう)が義父の藤堂高虎(とうどうたかとら)に宛てた書状で「大坂は(将軍の)御居(ごきょ)城(じょう)にもなさるべきところ」と記していたのだ▲この書状がきょうから大阪城天守閣で公開される。もし大坂幕府ができていたら文句なく「大坂時代」だったが、歴史はそれを幻にした。だが日本史ならぬ世界のテニス史でなら、きょうが「大坂時代」の幕開けになるかもしれない▲きょうの全豪オープン女子シングルス決勝で大坂なおみ選手はチェコのクビトバ選手と対戦する。勝てば21歳で全米に続く4大大会連勝、世界ランキング1位に輝く。今後長きにわたる女子テニス界への君臨を予感させる優勝となる▲去年の全豪オープンでは世界72位だった大坂選手である。わずか1年でいくつもの壁を一気に突き破った躍進は、物事に打ち込むすべての若者を勇気づけよう。そして日本、ハイチ、米国という多文化に育まれたあの天真らんまんだ▲どんな国の人々にも愛されるキャラクターは、テニスの神様にも新しい時代の扉をすんなりと開かせるのか。泉下(せんか)の秀吉も、歴代徳川将軍も、聞けば仰天するであろう全世界注目の「大坂時代」到来である。

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