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川本三郎・評 『謎とき『風と共に去りぬ』 矛盾と葛藤にみちた世界文学』=鴻巣友季子・著

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 (新潮選書・1404円)

意表を突く着眼にも説得力

 従来の常識が次々にくつがえされてゆく痛快な書。『風と共に去りぬ』(Gone with the Wind 以下GWTW)は米南部の上流階級の令嬢スカーレット・オハラの恋愛を描くロマンス小説と思われているが、精読すると決してそうではないと著者は力説する。より複雑で重厚な構えを持っている。

 大衆的な恋愛小説と言われるのは映画版のGWTWの影響が大きい。ヴィヴィアン・リーがあまりに素晴らしかったので、スカーレットは伝統的なサザン・ベル(南部の美女)と思われてしまうが、原作では「美人ではなかった」とある。彼女の住むタラの屋敷は映画では豪壮な白亜の殿堂だが、原作ではむしろ垢抜けない家とされている。そもそも舞台は洗練された旧都サヴァナではなく、田舎といっていいジョージア州内陸部になっている…

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