気候変動適応法の拠点整備 都道府県7割で未着手
農作物被害や気象災害など地球温暖化の被害軽減策「適応策」を推進するための「気候変動適応法」(昨年12月施行)で自治体に新たに整備することが求められている「地域気候変動適応センター」について、都道府県の約7割で整備の見通しがたっていないことが毎日新聞の調査でわかった。人材の確保や研究機関との連携の難しさなどから、自治体が苦慮している実態が浮き彫りになった。
調査は、法施行前の昨年11月、47都道府県を対象に書面で実施し、すべてから回答を得た。
法施行前から適応センターに相当する機能を確保していると回答したのは、埼玉、長野、徳島の3県(6・4%)。法施行を受けて整備を決めているのは岩手や長崎など7県(14・9%)。一方、東京や和歌山など32都府県(68・1%)が「いずれ整備したいが見通しは立っていない」と答えた。「整備する予定がない」と回答した自治体はなかった。
見通しが立たない理由について、「専門的知識を有する人材の確保などが課題」(千葉)や「センター(の機能)を担える機関がない」(奈良)などが挙げられた。国に対し、人材確保や財政面での支援を求める意見も相次いだ。
適応策推進に必要だが入手できない情報などを複数回答で尋ねたところ、「市町村単位の温暖化の影響予測」(26都道府県)が最多だった。
環境省によると、センター機能を担う組織として、自治体が持つ地方環境研究所や、大学など地元の研究機関を想定。複数の自治体が共同で整備することも認めている。田村誠・茨城大准教授(環境政策論)は「適応策の必要性は認識していても、具体的には課題の洗い出しができていない自治体が多いのではないか」と指摘。「温暖化の影響は既に出ている。専門的な影響予測などのデータを待つのではなく、住民が気づいた変化や被害を地域で共有することから、適応策の検討を始めることもできる」と話している。【大場あい】
気候変動適応法
地球温暖化に伴って増加が懸念される気象災害や健康への影響、農作物の品質低下などの被害を回避、軽減するための対策「適応策」推進を目的とした法律。国は適応に関する計画を策定して5年ごとに見直すことが盛り込まれ、法に基づく最初の計画が昨年11月に閣議決定された。自治体にも努力義務として、適応計画策定や、地域の拠点となる「地域気候変動適応センター」の確保を求めている。