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第103回全国高校野球選手権

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智弁和歌山/上 高嶋監督退任、中谷新体制へ 徹底分析、選手に浸透 /和歌山

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退任を表明して握手をする智弁和歌山の高嶋仁監督(右、現名誉監督)と、中谷仁・新監督=和歌山市冬野の同校で2018年8月25日、黒川晋史撮影 拡大
退任を表明して握手をする智弁和歌山の高嶋仁監督(右、現名誉監督)と、中谷仁・新監督=和歌山市冬野の同校で2018年8月25日、黒川晋史撮影

 <第91回選抜高校野球大会 センバツ>

 「監督を交代する。絶対甲子園に出ろよ」

 夏の甲子園初戦で敗れ、新チーム発足から約2週間たった昨年8月24日。智弁和歌山の高嶋仁(ひとし)監督(72)=現名誉監督=は練習する約20人の選手に集合をかけ、自らの監督退任と、後任を中谷仁(じん)コーチ(39)に託す考えを伝えた。新チーム発足後は中谷監督に練習の指導をほぼ任せていたこともあってか、選手に動揺は見られず、冷静に受け止めている様子だったという。

 高嶋名誉監督が、教え子の中谷監督を後継に考え始めたのは、中谷監督がまだ現役高校球児だった約20年前にさかのぼる。「チームをまとめる力があり、人間性が良かった。甲子園で優勝と準優勝を経験し、勝ち方も知っていた」と理由を明かす。

 中谷監督は智弁和歌山の捕手として強肩強打でならし、甲子園に春夏通算3回出場。96年センバツで準優勝し、主将を務めた97年夏の甲子園でチーム初の夏制覇を果たした。

 元チームメートで野球部OB会長を務める清水昭秀さん(39)=和歌山市=は率先して練習に打ち込む主将としての姿が印象に残っている。「謙虚で、みんなに好かれ、人を引きつける性格だった。監督になるべくしてなった」と納得する。

 高嶋名誉監督は、当時高3だった中谷監督に大学進学して指導者として母校に赴任してほしいと考えていたが、本人のプロ志望は固く、阪神にドラフト1位で入団。楽天と巨人でもプレーして2012年に現役引退した。その後、少年野球の指導などをしていたが、11年夏を最後に甲子園で初戦突破できなくなっていた高嶋名誉監督からチーム強化の打診を受け、17年4月、監督含みで母校のコーチに正式就任した。

 中谷監督は楽天で野村克也監督(当時)に指導を受けた経験を基に、相手チームの特徴を綿密に把握し、試合に生かすよう選手に徹底している。大会期間中はベンチ外の選手が、対戦する可能性の高いチームの試合に出向いて録画し、当日のうちに選手たちが見られるよう用意している。映像も漫然と見るのではなく、相手投手の球種や球速、守備体系、攻撃スタイルなど常に実戦を想定しながら注意深く観察し、各自で対策を考えるよう意識させている。

 外野手の細川凌平選手(1年)は「相手の打撃の傾向や力量がつかめるので、守備のポジショニングに役立つ」と話し、池田泰騎投手(1年)も「繰り返し見ていると相手のスイングや球種による打撃の違いが分かってくる」と効果を語る。

 中谷監督は「相手を知らないで勝つことはできない。特徴が分かっているからこそ良い結果を出せた試合は数限りない」と説く。元プロ直伝の周到な事前準備が、豪快な打撃を身上とする智弁野球に厚みを与えている。【砂押健太】

     ◇

 中谷仁監督の下、新たな一歩を踏み出した新生・智弁和歌山。センバツ出場決定の軌跡をたどる。

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