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3万5000人の中高生が授業ボイコット 温暖化対策を訴え ベルギー

温暖化対策の強化を訴えるため、授業をボイコットしてデモに参加したベルギーの中高生たち=ブリュッセルの中央駅前で2019年1月24日、八田浩輔撮影

 ベルギーの中高生たちが週に1度学校を休み、世界の指導者に地球温暖化対策の転換を求めるデモを続けている。わずか2人の呼びかけで始まったデモの参加者は増え続け、3週目となった今月24日には首都ブリュッセルに3万5000人(警察発表)が集まった。複数の有力紙が1面で取り上げるなど地元メディアの関心も高く、「緑の世代」は政治的な存在感を高めつつある。

「気候変動対策をサボることは、学校をサボるより悪い」

 24日午後0時半過ぎ。前日に積もった雪が残るブリュッセル中央駅前の広場は、あどけなさが残る若者たちの熱気で覆われていた。遠くから聞こえてくる掛け声に先導され、地鳴りのようなシュプレヒコールが繰り返し巻き起こる。

 「熱く、熱く、気候(変動)よりも熱く。熱く、熱く、気候よりも熱く」

「私たちの惑星を守れ」と顔にペイントしたデモ参加者たち=ブリュッセルで2019年1月24日、八田浩輔撮影

 この日は木曜日。若者たちの多くは関東地方ほどの大きさのベルギー全土から授業をボイコットして集まった中高生たちだ。手作りのプラカードにはこんな言葉が書かれていた。

 「気候変動(対策)をサボるのは、学校をサボるよりも悪い」「月に引っ越す金はない」

 今月10日に初めて開催されたデモにはオランダ語圏の中高生を中心に3000人が参加し、翌週は1万2500人に拡大。3万5000人が集まった24日は、もう一つの公用語であるフランス語圏の学生たちが加わり、参加者数を一気に押し上げる要因になった。試験期間を終えた大学生たちにも参加の機運が高まっている。

 仏語圏の高校に通うマキシムさん(17)は、この日初めてデモに参加したという。その理由を「自分たち(の世代)が何もしないと思われたくありません」と語った。友人と3人で参加したサシャさん(18)は「気候変動に対する関心の高さを示すために来ました。私たちの世代にとっては重要な問題で、大きな変化が必要です」と述べた。

 参加者のテンションが跳ね上がったのは、呼びかけ人のアヌナ・デ・ウェーフェルさん(17)がマイクを持った時だった。ベルギー北部のオランダ語圏の高校に通うアヌナさんは、昨年末に友人たちと一緒にフェイスブックで「学生ストライキ」を企画した。数カ月前まで普通の高校生だった彼女は、デモの拡大を受けて一躍ベルギーの中高生たちの顔になった。「私たちベルギーの若者は地球を破壊している人々を非難します。私たちは授業をサボった。でもあなたたちはこの地球への配慮を怠った」

授業ボイコットに理解を示す大人たち

通りを埋め尽くした中高生たちのデモ行進=ブリュッセルで2019年1月24日、八田浩輔撮影

 過去3回のデモは平和に行われた。隣国フランスに感化されてベルギーにも広がった「黄色いベスト」運動は、ブリュッセルでも警察車両を破壊したり、治安部隊と衝突したりして大量の拘束者を出した。これに対し、今回のデモで頭上に飛んできたものといえば、雪玉程度だった。

 このため大人たちは現時点では総じて寛容に見守っている。アヌナさんによると、学校は「自分たちの将来のことだから」と理解を示し、応援しているという。また欠席を認める代わり、デモに参加した証拠として現場での自撮り写真の提出を求める学校もあるようだ。沿道ではデモに拍手を送ったり、応援の声をかけたりする大人たちの姿もみられた。

 ベルギーのマルゲム・エネルギー・環境相も地元メディアのインタビューで、デモへの賛意を示した。もっとも現在の連邦政府に期待できることは乏しい。昨年12月に移民政策を巡る相違から議会の第1党が連立政権を離脱。ミシェル首相は辞意を表明したが、フィリップ国王の要請で5月26日の総選挙まで「暫定首相」として少数与党での政権運営を強いられている。

 アヌナさんは地元メディアに対し、「すべての政党が気候変動政策を最優先に掲げるべきだ」と主張。特定の政党とのつながりを否定した上で、総選挙まで毎週デモを続けると話している。今後の展開次第では、温暖化対策が選挙の大きな争点に浮上する可能性もありそうだ。

 ドイツの環境NGO「ジャーマンウオッチ」などが世界の主要国・地域の地球温暖化対策の取り組みを比べたランキングの最新版(2019年)によると、ベルギーは57カ国・地域中31位(1~3位は該当なし)で、5段階評価の「中程度」のグループに位置づけられている。なお日本は49位で最低レベルのグループだった。

 若者たちが危機感を訴える根拠の一つには、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が掲げる理想と現実との乖離(かいり)がある。パリ協定は産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑えることを目指す。これに従い、参加国は30年までの温室効果ガス排出量の削減目標を掲げているが、1・5度目標の達成には、各国が掲げる削減量を5倍に高める必要があると指摘されている。

きっかけを作ったスウェーデンの少女と「クライメート・ジャスティス」の考え方

 学校をボイコットして環境問題への迅速な対策を求める動きは、ベルギーのほかにも欧州各国やオーストラリアに広がる。きっかけとなったのは、スウェーデンの高校生で環境活動家のグレタ・トゥーンベリさん(16)。昨年秋、気候変動への取り組みを訴えるためにスウェーデン国会前で2週間近く座り込みを続けて注目を集めた。

授業ボイコットを呼びかけた17歳のアヌナ・デ・ウェーフェルさん(右)。一躍ベルギーの中高生世代の「顔」になった=ブリュッセルで2019年1月24日、八田浩輔撮影

 グレタさんは昨年12月にはポーランドで開かれた国連の気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)に登壇し、世界の指導者たちの前で演説した。それは間違いなく会議のハイライトの一つだった。以下は彼女のスピーチの一節だ。

 <2078年に私は75歳の誕生日を迎えます。もし子どもがいれば、きっとその日は一緒に過ごすでしょう。子どもたちは皆さんのことを私に尋ねるかもしれません。まだ行動する時間があるうちに、なぜ何もしなかったのかと。皆さんは、自分の子どもたちに『何よりも愛している』と言いながら、その目の前で未来を奪っています。政治的に何ができるのかではなく、何をする必要があるのかに目を向けない限り、希望はありません。危機を危機として扱わなければ、解決はできません>

 グレタさんやアヌナさんたちに根ざすのは「クライメート・ジャスティス」という理念だ。化石燃料の大量消費で経済成長を遂げた先進国と、温暖化による被害を受けやすい途上国や将来世代の間との不正義を人権問題として捉え、それらを正すことを求める考え方である。日本では「気候の公平性」や「気候正義」と訳されるが、浸透しているとは言い難い。ベルギーの中高生たちのデモでは「私たちが求めるのは何?」「クライメート・ジャスティス!」「いつ?」「今すぐに!」という掛け合いが繰り返されていた。

 アヌナさんは「日本にも(学生)ストライキが広がってほしいと思います。地球規模の重要な問題だから一緒に行動してほしい」と語った。異常気象や自然災害など温暖化の影響が暮らしに及びはじめる中、変化のうねりは日本の同世代にもいずれ訪れるだろう。同時に考える。若者たちが自らの権利のために立ち上がった時、日本の学校や社会はベルギーにみられるような寛容さを示すことができるのかと。【八田浩輔、取材協力/アンソフィー・デ・マック】

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