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2020年いっぱいで活動を休止すると発表した人気アイドルグループ「嵐」。27日にメンバー5人が突然記者会見したが、和やかな場面が大半を占めた。ちょうど3年前、テレビの生放送でやはり5人そろって「解散騒動」を謝罪した時のSMAPの硬い表情とは対照的だった。ともにジャニーズ事務所に所属し「国民的アイドル」として圧倒的な人気を誇る中で活動を止める決断をしたにもかかわらず、この違いはどこから来るのだろうか。アイドルや広報戦略に詳しい識者に分析してもらった。【大村健一、小国綾子、佐藤丈一、和田浩幸/統合デジタル取材センター】
27日午後、嵐は事務所のファンクラブの公式サイトで活動休止を発表し、夜にメンバー5人が記者会見を開いた。その前後から、ツイッターでの拡散数を示す「トレンド」のランキングになぜか「SMAP」も入った。両者ともグループとしての「冠番組」を持ち、数々のテレビCMに出演。メンバー個人もドラマやバラエティー番組などに引っ張りだこなのも共通しており、多くの人が即座にSMAPと比較したようだ。
しかし、経緯やファンの受け止め方は大きく違う。
SMAP解散の発端はジャニーズ事務所と担当マネジャーの不和によるグループの「分裂」騒動が16年1月に報道されたことだ。これを受けて、同月18日にフジテレビ系番組「SMAP×SMAP」で、メンバー5人が黒いスーツをまとい、神妙な表情で「不安にさせてしまい申し訳ありませんでした」などと謝罪。ファン以外からも「まるで公開処刑だ」と批判の声が上がった。
この時は活動の継続を表明したSMAPだったが、結局、同年8月に解散を発表。ファンからは「やめないで」と悲痛な声が上がったが、メンバーの口は重く、理由について詳細は語られないまま、同年12月31日に28年にわたった活動の幕を下ろした。5人は事務所を通じてコメントを出したが、記者会見は開かれなかった。
一方、嵐の記者会見では、メンバーは経緯について多くを明かした。
それによると、リーダーの大野智さんが「自由な生活をしてみたい」と17年6月にメンバーに提案。話し合いを重ね、昨年6月に活動休止の方向性を固めたという。
「話し合いの中で、言い合いやけんかはなかったか」という記者の質問に、5人は口をそろえて「ないですね」と答えた。メンバーの二宮和也さんは「(けんかの話を)書きたそうですね。(そういう話は)すぐ書くんだから、もう」とちゃかし、相葉雅紀さんも「うそでも(けんかを)しとけばよかったね」と笑うなど、和やかなやり取りとなった。
現在、嵐は年末まで全国のドーム球場で50公演するという国内史上最大規模の観客動員(約240万人)となるコンサートツアーの真っただ中で、200万人以上とされるファンクラブ会員らと接する機会も多く設けている。
悲しむファンは確かに多い。だが「解散ではなく休止という言葉に救われた」との意見も多い。大野さんが記者会見で「見たことのない景色を見てみたい」と話したことから、ツイッター上では「#大野くんの夏休み」というハッシュタグが作られ、「ゆっくり休んで」「2学期を待ちます」などと温かい言葉が盛んに投稿された。
「テレビとジャニーズ」などの著書のある社会学者、太田省一さんは、SMAPとの“幕引き”の違いについて、「活動休止」という選択に注目する。
「解散、ではなく、休止。しかも休止までに2年間という猶予時間を置いた。口の悪い人は、2年間でもうけるんだろう、などと言うでしょうけど、でもファンにしてみれば、ソフトランディング(軟着陸)の時間を与えてもらえた。優しすぎるくらい優しい、嵐らしい幕引きだと思います」
「そもそも、平成のアイドルというのは一度芸能界を引退したらもうおしまい、というのではないんです」と太田さんは言う。「かつてのアイドルは、人生の一時期に疑似恋愛的に夢中になる対象であることが多かった。しかし平成時代のアイドルは、人生を一緒に過ごしていく伴走者のような存在。もはや偶像ではなく人間なんです。ファンも、アイドルにはアイドルの人生があると知っているから、大野さんが『自由になりたい』『違う景色を見てみたい』と言えば、それを応援しようとする」と説明した上で、「そんな平成時代のアイドル像を切りひらいたのがSMAPでした」と指摘する。
また、「SMAPにはメンバーの個性のぶつかり合いのようなものが見えたが、嵐の場合、それぞれ個性は違うのに、ぶつかり合わない関係性が魅力だった。ガツガツせず、かといって自分探しに躍起にもならず、『僕らは僕ら』という自然体。それが幕引きにも表れているように思います」と語る。
「嵐のメンバーはSMAPのことを踏まえ、なるべく大事にならないようにしたかったのではないかなと思います。突然の発表ではあったけれど、ファンの方にも『いつかは何らかの身の振り方の話が出てくる』という覚悟もあったのではないのでしょうか」
そう語るのは明治大非常勤講師の関修さんだ。専門はフランス現代思想だが、長年、ジャニーズ事務所のアイドルたちを分析。嵐の楽曲のプロモーションビデオについて講義し、嵐に関する著作もある。
関さんは記者会見での5人の服装にも注目する。黒のスーツ姿だったSMAPに対し、嵐はカジュアルだった。「緊迫感があふれるような服装はせず、ファンにショックを与えないような狙いもあったのではないでしょうか」
著書では、SMAPは「カリスマ的」で、嵐は「隣人的」だと分析した。「例えばSMAPは『キムタク現象』を引き起こした木村(拓哉)君や、庶民性を武器にさまざまな番組で司会をこなした中居(正広)君のように、個々のメンバーのカリスマ性が高かった。一方、嵐は『普通のお兄さん』が集まって、メンバー同士がわいわいと楽しんでいる様子をみんなも楽しむという枠組みを提示して人気を集めました。ファンにとっては身近にいそうな理想の恋人であり、友人であり、息子であったのだと思います」と関さんは言う。
そして「今年が結成20周年で、来年は東京五輪・パラリンピックがあるので、そこでの役割もあるでしょう。活動を休止するならば、このタイミングでなければ難しいという側面もあったのかなと思います」と5人の決断をおもんぱかった。
コラムニストでアイドル評論家の中森明夫さんは、嵐の大野さんが活動休止を切り出したのが17年6月だったことに着目する。「SMAP解散から半年しかたっていない。グループを維持しながら、個としても活躍するスタイルを作ったのはSMAPであり、嵐だけでなく(同じ事務所の)TOKIOやV6などにも引き継がれています。SMAPの終わり方を見て、自分たちの行く末をも考えたのではないでしょうか」
記者会見で出た「活動休止は無責任ではないか」という質問への対応にも注目する。この時、桜井翔さんは「我々からの誠意は、およそ2年近くの期間を設けて、感謝の思いを伝えていく(こと)。その姿勢を見て、無責任かどうか判断していただけたらと思っています」と険しい表情で答えた。
「これを聞いて『SMAPと比べたら』と捉える人もいたと思いますね。ちゃんとファンにお礼をしてきちんと終わりを迎える。しかも『解散』ではない。彼らなりに考えた結果でしょう」と中森さんは話す。
ジャニーズ事務所ではSMAP解散以降、「タッキー&翼」が昨年限りで解散したり、「TOKIO」は昨年、メンバーの山口達也氏が女子高校生に対する強制わいせつ容疑で書類送検(後に起訴猶予処分)されて脱退したりするなど、長年活躍してきたグループに異変が起きている。「それぞれに原因はあるのだろうけれど、SMAPという大スターがああいった形で解散したことで、事務所がぎくしゃくしているように感じます」
広く人々に伝える「広報」のスタイルの違いをどう見たらいいのだろうか。
「SMAPは事情もあったでしょうが、本人らが発信しない中、発表が後手に回ってしまい、臆測や第三者の見解が事実のように伝わって混乱しました。嵐は先輩の例から学んで、自らの言葉で、全員がそろって記者会見をすることで世間に理解してもらおうと試みたのではないでしょうか」
企業マーケティングや社会分析に詳しい宣伝会議の田中里沙取締役はそう分析する。さらに田中さんは、20年末までで活動期間を区切ったことや、21年以降の個々のメンバーの活動がどうなるのかほとんど決まっていないことを強調した点にも着目する。
「20年に向けて『嵐とは何か』『嵐がどうなっていけばいいか』をファンと体験を共有しながら、価値をさらに高めることに挑んでいるのではないでしょうか。情報の送り手と受け手のやりとりを超えて、共通の目標や目指す姿を共に考えてもらう手法は、広告コミュニケーションの分野で『巻き込み力』と言います。皆を当事者に巻き込むことで『聞いてない』『知らなかった』という声も出なくなります。その手法は今回成功したと思います」
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