オピニオン

外国人労働者の増加は避けて通れない道なのか~人口減社会が抱える大問題を考える 政治経済学部経済学科 教授
小﨑 敏男

2019年2月1日掲出

 日本の人口は減少期に入り、生産労働に従事できる生産年齢人口(15歳以上65歳未満)も減少する一方だ。労働力不足を補うため、2018年12月には外国人労働者の受け入れ拡大をめざす改正入国管理法が成立、今後は今以上にさまざまな労働現場で外国人が増えることは確実だ。外国人労働者の拡大によって、これからの日本社会はどうなるのか、人口減と労働力の問題が専門の小﨑敏男教授に聞いた。【聞き手・中根正義】

 

 ──昨年12月に改正入国管理法が国会で可決、成立したことで、外国人労働者がさらに増加することが確実視されています。わが国で生産年齢人口の減少を単純に外国人労働力で補充した場合、中長期的にみてどれだけの数が必要となるのでしょうか。

 2000年3月に国連人口部が「補充移民」と題して、「移民の受け入れは人口減少と高齢化の解決策となりえるか?」を発表して、一時話題になりました。資料によると、わが国が2005年の総人口を維持しようとするならば、50年までに1700 万人、年間38万1000人の移民が必要である。また、1995年の生産年齢人口8720万人を維持するためには、95年から 2050年まで3350万人、年間60万9000人の移民が必要であるとしています。

 より最近のデータから検証してみましょう。国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)が公表している「日本の将来人口推計」(平成29年推計)によれば、2015年の総人口は1億2709万人で生産年齢人口は7728万人、構成比は60.8%になっています。

 これが25年後の40年になると総人口は1億1091万人、生産年齢人口は5977万人で構成比は53.9%に減っていきます。15年の生産年齢人口を基準としてこのままの生産年齢人口を維持するのであれば、今後25年で年間70万人受け入れなければいけないという途方もない数となります。

 さらに、50年後の65年には総人口が8807万人、生産年齢人口が4529 万人で構成比51.9%と、15年より約10%ポイント減少する。そのため、今後50年間で年間63万人くらい補充しなければなりません。今後50年間が25年間より少なくなっているのは、団塊の世代(1947-49年生まれ) の動向が影響しているためです。

 社人研では参考推計として100年推計も算出しています。それによると100年後の2115年、わが国の総人口は5055万人で今の半分くらいになる。生産年齢人口は2592 万人で、構成比は51.3%とそれほど変わらないが、数値を見れば人口は半減するし、とんでもないことになることがわかります。100年後は5136万人減で、年間51万人の外国人受け入れが必要になります。

 

 資料:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

 注)2065年以降の推計は参考推計。 出生・死亡中位推計。

  

 ──政府は5年間で約35万人を受け入れると言われていますが、この数字だけ見ると、外国人だけで補充するというのは、国連が言うまでもなく不可能だということが分かります。

 重要なのは生産年齢人口の“比率(シェア)”をどう維持するかです。2015年の総人口に占める生産年齢人口の比率を一定にして、どれだけ年間受け入れなければいけないのかを見なければならないということです。

 2015年の生産年齢人口は60.8%、これを40年に当てはめると6743万人ということになり、985万人減少するものの、それでも年間40万人を受け入れなければならない。50年後の65年になると生産年齢人口は5354万人で、15年との差が2374万人です。60.8%を維持するには年間47.4万人受け入れなければならない。100年後の2115年、生産年齢人口は3437 万人になるので、15年との差は4291 万人で年間42.9万人の受け入れが必要になります。いずれにしても、今の生産年齢人口比率(シェア)を一定にしようと思えば、年間約40万人の外国人を受け入れなければならず、外国人受け入れによる単純な「補充移民」政策では、人口減少対策や労働力不足対策にはならない。

 

 ──ここで、改めて12月に成立した改正入国管理法の主な変更点を教えてください。

 もともとは技能実習生に非常に問題があったのです。読んでわかるように「実習生」であって「労働力」ではない。本来は発展途上国の技術援助・技術移転が目的だったのに、それを労働力とみなして働かせた時点で完全に矛盾が生じていました。実習生は嫌になっても転職できず、帰国しなければならないので雇用主の力が強くなるのは当たり前です。だから失踪者が相次いでいます。

 改正入管法では、これまで単純労働は基本的に技能実習生や2世・3世を入れていたのを、単純労働者の受け入れ枠として特定技能1号・2号を新設しました。したがって、技能実習生の枠から特定技能1号・2号にある程度の人数は移ると思われます。

 いずれにせよ、外国人増加という流れ自体は変えられない。最終的には、シンガポールのように、日本にいながら日本でなくなるような形になるのではないでしょうか。必然的に、日本人と外国人は共生しながら暮らしていかなければならなくなるでしょう。

 

 ──地域によっては、すでに小学校の児童の3割超が外国人というところもあります。外国人労働者をこれまで以上に受け入れるために準備しておくべきことは何でしょうか。

 現在、外国人には教育を受ける義務はありませんが、今後は日本人と同じく義務化しなくてはならないと思います。東京商工リサーチのアンケートなどを見ても、外国人を受け入れる態勢ができていないので受け入れられないという声が多い。やはりコミュニケーションのツールとして日本語が話せないといけません。そうでないと、治安の悪化も招きかねません。日本の文化や慣習を知っていれば、ゴミ出しなどのトラブルも減っていくはずです。コストはかかるかもしれないが、外国人に依存しないともうやっていけないのです。社会統合の一環として進めるべきです。外国人に対する、日本語教育の義務化の財源として、マレーシア政府が検討しているような人頭税の導入が考えられます。移民局(政府は、現在、移民は認めていない)などしっかりとした部署をつくる必要もあります。

 

 ──経営サイドには、公明正大な賃金・雇用のシステムを確立することが急がれます。ダイバーシティーマネジメントも先進諸国の例を採り入れながら学んでいかざるを得ません。

 労働力不足に対処するためには、高齢者雇用を通して労働力を創出することも重要です。総務省の労働力調査(2017年)を基に計算すると、現在の65-69歳の労働力率45.3%を60-64歳と同じ68.1%に引き上げれば、労働力人口が200万人程度創出されます。同じく、70-74歳の労働力27.6%を65-69歳の45.3%に引き上げると、労働力人口は130万人程度創出されます。そのためにも、国が定年を65歳に法律的に規定すべきです。そうすれば、企業は自助努力をする。どうやって60-65歳の人を雇用すれば効率的になるか、自分たちで考えるようになるのです。今後は、70歳まで、働く意思のある労働者が働ける社会システムなり雇用システムの創造が必要です。

 一般市民についていえば、多文化を受け入れ、コミュニケ-ション力を高めていく努力が求められます。今後は、必然的に外国人とビジネスや居住空間の共有にならざるを得ないことを覚悟しておくべきです。また、受け入れる国の労働者は、以前より高度な知識・技術を必要とする職業選択が求められる可能性が高まります。

 

 ──先生のご専門を踏まえ、今後、さらに考えていかなければならないテーマや分野はどんなところにあるでしょうか。

 人口減少と労働政策に関するあらゆる分野はもちろん、イノベーションの生成メカニズム(労働生産性)、第4次産業革命と雇用(システム)、地方創生(人口減少対策)などさまざまありますが、地方創生に関して言えば、今は地方交付税で人口の減っているところも面倒を見られますが、国の財政が厳しくなる中で、最終的には見られなくなるでしょう。そう考えると、地方が自活できることを大前提にしていかなければなりません。地方は地方で完結するような社会システムをつくっていかなければならないでしょう。そのためには働く場所を確保することが大切です。東京一極集中を是正し、県と県、または県と国がタイアップして雇用を創出する企業を誘致すべきですし、情報通信社会の進展に伴う、産業構造の転換にも取り組まなければならないでしょう。

 

 ──これからの時代、変化の激しい時代を生きていかなければならない、若い人たちへのメッセージをお願いします。

 今のうちに「人生の生きる指針」を養成し、鍛錬してほしいということです。高度な知識を持ち、名誉や肩書、社会的地位を得ること、お金を儲けることを決して否定するつもりはありませんが、人生の生きる指針がなければ、こうしたことが得られたとしても、空虚な人生を送ることになってしまいます。 同時に、人を肩書や社会的地位で判断せず、その人の持つ人格で判断せよと言いたい。このことは、多様な文化を受け入れ、さまざまな文化的背景を持つ人々と共生することにもつながるはずです。

 生きる指針を得るためにどうすべきか。私は現在の日本の礎を築いた偉人の本を読むことを勧めたいですね。

 「人生こころ一つの置きどころ」という言葉があります。心の持ちよう一つで、人生は良くもなり、悪くもなる。若いうちは、何事にも積極的に取り組んでほしいと思います。

 

写真左から、人口高齢化と労働政策(出版元:原書房)、少子化と若者の就業行動(出版元:原書房)、キャリアと労働の経済学(出版元:日本評論社)、労働力不足の経済学(出版元:日本評論社)

 

3月発行予定新刊人口学シリーズ18「移民・外国人と日本社会」(出版元:原書房)

 

政治経済学部経済学科 教授 小﨑 敏男 (こさき としお)

1982年東海大学政治経済学部経済学科卒業、1996年中央大学大学院研究科経済学専攻博士後期課程修了、1997年3月博士(経済学)、1996年東海大学政治経済学部経済学科専任講師、1998年東海大学政治経済学部経済学科助教授、2005年東海大学政治経済学部経済学科教授(現在に至る)。 主な著書・論文に、『労働力不足の経済学』(単著、日本評論社、2018年)『キャリアと労働の経済学』(共編者、日本評論社2011年)、『少子高齢化と若者の就業行動』(共編者、原書房2012年)『人口高齢化と労働政策』(共編者、原書房2014年)、『移民・外国人と日本社会』(共編者、原書房2019年3月上旬刊行予定)、機関誌『NETT』(一般財団法人 北海道東北地域経済総合研究所)で、「いま、日本経済に何が起きているのか」連載・経済研究(http://www.nett.or.jp/nett/)を連載中。国際教養大学アジア地域研究連携機構・秋田経済研究所・北海道東北地域経済総合研究所 主催フォーラム「高質な田舎で豊かに働く~人口減少最先端『秋田』からの提言~」研究発表・パネリストとして参加(報告書あり)。伊勢原市総合戦略総合推進会議(座長)として参加。2009年12月4日OA、2時間SP「たけしのニッポンのミカタ!」(テレビ:外国人労働に関してコメント出演)。現在、人口減少と労働政策(外部労働市場・内部労働市場)に関する全般的な研究を行っている。