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銭湯百景

後継者不足や経営難で廃業が相次ぐものの、銭湯は昔も今も地域のコミュニケーション拠点。身も心も解きほぐし、人間関係を紡ぎ直せる場所だ。各地の銭湯をめぐり、地域の人や物語を紹介する。

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銭湯百景

/13 一日の終わり、感謝忘れず

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以前より湯量が減り、現在使用しているのは手前の浴槽のみ
以前より湯量が減り、現在使用しているのは手前の浴槽のみ

 日本三大急流の一つ、球磨川(くまがわ)の上流部に位置する熊本県人吉市は、「人吉温泉」で知られる温泉地だ。約50の泉源があり、温泉を利用した銭湯も多い。中でも「新温泉」は、約90年前の創業当時のままの建物で、そのたたずまいは訪れる人を魅了している。

 ●古いのに「新温泉」

 JR人吉駅にほど近く、大通りから1本入ってすぐのところに新温泉はある。青い屋根の木造平屋建ての外観は何ともレトロな雰囲気。内部も昭和の香りが漂う。昔ながらの番台に、よく磨かれた脱衣所の床の色は深みがある。壁にはフランスの雪山や鳥などが描かれたペンキ絵の広告。既に閉店した衣料品店のもので、「TEL868」と今では見かけない番号が記してある。「まだ電話交換手がいた時代のものです」と3代目の永見明子さん(64)が教えてくれた。

 新温泉は永見さんの祖父、三郎さんが1931年に創業した。早くに亡くなったため、永見さんには祖父の記憶がほとんどない。店名は三郎さんの父、新三郎さんの名からとった。「『古いのになぜ新温泉なのか』とお客さんに言われることがあるんです」と笑う。

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