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「お父さんにぼう力を…」父親に渡されていたアンケート 検証 千葉・女児虐待死 中

千葉県警野田署から千葉地検松戸支部に送検される栗原勇一郎容疑者=千葉県野田市で2019年1月26日、信田真由美撮影

児相、保護緊急度を「AA」から「B」に引き下げ

 「糸満市から、父親による心愛さんへのどう喝や母親へのDVについては引き継ぎがなかった。どう喝の情報があればすぐに『要保護児童』にしていた」。野田市児童家庭課の担当者は言う。

 糸満市からの引き継ぎとして残されている文書には、次女と母親の体調についてしか書かれていない。これだけでは、市の要保護児童対策地域協議会(要対協)のリストには載らないが、17年10月11日、市職員が自宅を訪ねると、母親が「見知らぬ土地での生活が不安だ」と話したため、心愛さんと次女を「要支援児童」としてリストに載せることが決まった。

 要対協は、野田市、児相、千葉県警野田署、学校の関係者や、民生委員らがメンバーで、虐待の恐れがある児童の状況について情報共有し、それぞれのケースについて支援の仕方を協議している。野田市内だけでリストに載る児童は約170人に上る。

 心愛さんが9月1日に沖縄の小学校から転校した野田市の小学校には転校時、虐待のリスクについては何も伝えられなかった。

 11月6日、全児童を対象とするいじめアンケートに、心愛さんはこう書き込んだ。

 「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり起きているときにけられたりたたかれたりします。先生、どうにかできませんか」

 翌7日、教員の聞き取りにも「母がいないところでたたかれる。『てめえ早く宿題やれ』と言われる」などと具体的に被害を訴えた。その日のうちに学校から市教委に報告し、職員が柏児相に連れて行った。右ほおにあざがあり、児相に「背中や首をたたかれ、顔をグーで殴られた」と打ち明けた。保護の緊急度についてアセスメントシートを使った結果、ランクは最も高い「AA」。同日中に一時保護し、要対協も「要保護児童」とした。

 児相は父親への面接を一時保護期間中の11月に2回行っている。右のほおのあざについては「自分ではやっていない。抱きかかえたときに押さえたかもしれない」と言い、虐待を否定した。児相の担当者は取材に「虐待を認めている親なら指導の余地があるが、認めていない以上、指導のきっかけがなかった」と振り返る。

 保護解除の判断のため、児相は12月に入ってから再び「緊急度アセス」を行った。結果は4段階中下から2番目の「B」に下がった。同時に「リスクアセス」も実施した。虐待が続いていないか、関係機関からの援助があるか、養育者はどのような状況かなど25項目にわたって調査する。養育者の状況については、育児能力や精神状況、性格、薬物やアルコールへの依存、児相など援助機関への協力態度などを調べる。児相は保護解除時と、心愛さんを親族宅から自宅に帰すタイミングでこのアセスを実施しているが、「(心愛さんが)自宅に帰るのに問題がある」という結果は出なかったという。

 アセスの結果を受け、12月27日、心愛さんを勇一郎容疑者と引き離して野田市内の勇一郎容疑者の親族宅でしばらく生活させることなどを条件に、児相は保護を解除した。

 一方、勇一郎容疑者は小学校に「断りなく(児相に)連絡するのはおかしい」と怒りをぶつけていた。18年1月12日に学校で行われた市教育委員会も交えた話し合いで、勇一郎容疑者は「人の子を誘拐するのか」「訴訟を起こすぞ」「アンケートの実物を見せろ」などと激高。市教委職員が同15日、心愛さんが被害を訴えたアンケートのコピーを手渡した。この時の経緯は1カ月以上、市教委から児相に報告されなかった。

 学校は「心愛さんをまた通わせてほしい」とお願いしたが、勇一郎容疑者は「別の学校に通わせる」と言って、自宅から約3キロ離れた市内の親族宅近くの小学校に同18日、転校。この転校時にアセスは実施されなかった。児相は取材に「そこまで必要だというケースではないと判断していた」と答える。

 2月下旬には、児相の援助方針会議で、心愛さんを自宅に戻してもよいという判断を下している。このときのアセスも結果は「B」で、約2カ月、心愛さんが転校先の学校で問題なく登校できていたことや家に帰ることを望んでもいたこと、離れて暮らしていた勇一郎容疑者による新たな虐待の発生がないこと、心愛さんの勇一郎容疑者への不安感は保護期間中も「父が怖い」と話しぬぐい切れてはいないもののだいぶ減っていたこと――などを踏まえたとしている。

 心愛さんが必死に書き込んだいじめアンケートの結果が勇一郎容疑者のもとに渡ってしまった事実を知らないまま児相が下した判断は正しかったのか。児相が勇一郎容疑者と面会をしたのも17年11月の2回と18年2月の1回のみだった。児相の担当者は打ち明ける。「解除後の児相の援助は、児相と関係がうまくいっている親なら会えるが、(勇一郎容疑者とは)最初から関係が良くなく『会いたくない』と数回言われた。会いたいというアプローチは当然していたが、拒否されており、会うのは難しい、と認識していた」

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