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誰も女児の自宅アパートを訪れず…起きた事件 検証 千葉・女児虐待死 下

定例記者会見で事件について聞かれ、険しい表情を見せる森田健作・千葉県知事=千葉市中央区の千葉県庁で2019年1月31日、町野幸撮影

児相「学校内での見守りと聞き取りで十分」と判断

 勇一郎容疑者は18年4月、東京都内で沖縄の観光関係の仕事に就く。上司は取材に「勤務態度は良好で、対外的にも丁寧でいたって実直だった。お客さんからお礼の連絡をもらうこともあり、評判も良かった。協調性もあり、他の職員にも目配りできる人間だった」と評する。それだけに、事件を知った同僚たちの衝撃は大きかった。

 心愛さんが3月上旬に自宅に戻った後、児相が勇一郎容疑者と面会することは一度もなかった。その理由を柏児相の二瓶一嗣所長は1月28日の会見で、「虐待の程度が低かったので、学校で聞き取るだけで十分と思った」と説明する。市児童家庭課は取材に「児相が大きく関与していたのでその判断に従った」と答える。18年4月には、東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5歳)が虐待死した事件を受けて、「要保護児童」のリストが千葉県警野田署にも共有されるようになった。だが、児相の判断を超えてまで対応しなければいけない事案とは考えていなかった。

 心愛さんが自宅に戻ってから児相が一度も勇一郎容疑者と面会しなかったことは適切な対応だったのか。大阪市こども相談センターは「元の家庭に生活の場を移すことは一定のリスクになる。両親から話を聞くのは基本だと思う」。福岡市こども総合相談センターは「そもそも、親が虐待を認めていない状況では親元に帰しにくい。親からの虐待で一時保護したなら、解除の後の状況は基本的には親と直接会って確認する」と取材に答える。野田市の関係者はこう振り返る。「柏児相の対応は腰が引けていた」

 児相から「学校内での見守りと聞き取りで十分」という方針を伝えられた学校は、プールや健康診断であざなどがないか確認するとともに、本人の表情や言葉がけにどう反応するのか、服装が清潔か、体形に変化がないかを注視した。4月には家庭訪問もあったが、親から希望がなかったという理由から実施されていない。7月と12月には学校で個人面談があり、担任から両親に「学級委員をやって、ほかの活動も頑張っている」と報告した。6月と11月には全児童対象のいじめアンケートも実施したが、前の学校で「父からいじめを受けている」と書いたアンケートのコピーが勇一郎容疑者に渡ってしまった心愛さんが再びアンケートに被害を書き込むことはなかった。

 穏やかな性格で笑顔が似合う頑張り屋だった心愛さんが最後に学校に姿を見せたのは12月21日だった。勇一郎容疑者の勤務先によると、勇一郎容疑者は18年12月29日~1月6日に休暇を取り、7日に再び出勤している。そして同日、勇一郎容疑者から学校に「娘は冬休みに妻の実家の沖縄に帰っている。もう少し沖縄に滞在させたい」、11日には「曽祖母の体調が悪いので、1月いっぱい沖縄にいる。2月4日に登校させる」と電話があった。

 学校は1月11日、市に月末まで心愛さんが休むことを連絡している。だが、市が要対協の構成メンバーである児相や警察に伝えることはなかった。学校は21日に今度は柏児相に直接連絡。要対協の会合は22日にもあったが、心愛さんの状況について議題に上ることはなかった。市の担当者は取材に「緊急性のある情報という意識を持てず、危険性がある状況だと認識しなかった」と連絡しなかった理由を述べる。学校も「夏休み後も曽祖母の具合が悪くそばにいたいからと言って1週間くらい休んでいたので、今回も疑問に思わなかった」とし、訪問などは行っていない。

 1カ月以上、心愛さんが学校に姿を見せることがない中、誰も自宅アパートを訪れることなく、事件は起きた。捜査関係者によると、勇一郎容疑者は「24日午前10時ごろから、しつけのため、心愛さんを立たせたり、怒鳴ったりした」と話している。午後11時10分ごろ、勇一郎容疑者自ら「風呂場に連れて行き、娘ともみ合いになった後、意識がなくなった」と110番。救急隊員が駆け付けると、浴室で服を着たままあおむけになって心愛さんが死亡していた。司法解剖でも死因はわからなかった。死後硬直がみられ、亡くなった後しばらく放置されていたとみられる。家には母親と1歳の次女もいた。

 近所には、一家が引っ越してきてから、心愛さんとみられる悲鳴を聞いたという人もいる。アパートの住人の男性(51)はつぶやいた。「人の入れ替わりが激しく、あいさつしない人もいる。その希薄さも事件が起きてしまった原因の一つだと思う」

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