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第94回センバツ高校野球

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常笑高商

チームの軌跡/5止 センバツ決定 その日まで自分磨き /香川

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センバツ出場が決まり、ガッツポーズをする高松商の選手ら=高松市松島町1の同校で、潟見雄大撮影 拡大
センバツ出場が決まり、ガッツポーズをする高松商の選手ら=高松市松島町1の同校で、潟見雄大撮影

 <第91回選抜高校野球大会 センバツ>

 「よくやった。出場校にふさわしい高商野球部を目指し、本番に向け頑張ってほしい」

 1月25日。グラウンドで春の便りを待っていた野球部に梶正司校長が告げた。駆けつけたOBや保護者の間にも歓声が広がる。だが、日が沈んだ頃に始まった練習。この日のメニューを確認するミーティングが始まる時、選手の顔からはすでに笑顔が消えていた。

 「甲子園で勝ち上がるには、まだまだ力が足りない」。飛倉爽汰主将(2年)や、副主将を務める香川卓摩投手(同)が呼びかける。浮き足だった様子を見せる選手は、誰もいなかった。

 その夜。岸本将翔(まさと)選手(同)の携帯電話にはセンバツ出場を祝福するメッセージがLINE(ライン)で複数届いた。中には、小学生の頃に指導を受けたソフトボールチームの監督、コーチからも。「甲子園で活躍することが、お世話になった人への恩返しになる」。もっと周りを喜ばせたい。そう思うほど、気が引き締まった。

 「甲子園でもコツコツネバネバです」。仲間で声を掛け合い、堅守で耐え、つないで勝つ。長尾健司監督は「一枚岩」の意識を選手が持ち続けるよう、チームを成長させた合い言葉を再三口にする。昨秋以降の公式戦でチーム打率は3割2分5厘。明治神宮大会では2試合で13点を奪い、一定の自信を得た。ただ、甲子園常連校の力強い当たりを目にし、まだ及ばぬ点もあらわになった。

 体作りに力を入れる冬。選手は体幹を鍛えるトレーニングに励んでいる。軸が安定することで体をスムーズに回転させることができ、打撃は力強さを増す。篠原一球選手(1年)は「守っていて怖いと思われる打線になれるよう力を付けたい」。強打を武器に勝ち上がり準優勝を果たした2016年のチームに匹敵する量をこなし、春に備える。

 日程が順調に進めば12日間で5試合を戦うことになるセンバツ。頂点にたどり着くために、投手は一球一球を全力で投じるのは難しい。長尾監督も「力を抜きつつ丁寧に投げ、抑えられるようになってほしい」と期待する。中塚公晴投手(2年)も「強豪校の打者は簡単にアウトになってくれない。球の質や制球力を上げる必要がある」と語る。

 でも、悲壮感はない。力みを抜いてバットの振りをスムーズにするよう提案したり、確実にアウトを取るために前進して捕球するよう助言したり、制球を安定させるための投球フォームを探り合ったり--。「口出ししなくても自然にできている。意識を高く持って取り組んできたから、強くなったんでしょう」。喜々とした表情で強くなるための方法を話し合う選手らを眺め、長尾監督の目元も緩む。

 「自分たちの弱さ」を見つめ、課題を一つ一つ克服することで甲子園への道を開いてきた高松商。センバツ開幕まで50日たらず。夢舞台でチームがひときわ輝く笑顔であふれるよう、おごりを知らぬ選手らは日々の自分を磨きながら「その日」を待つ。=おわり(この連載は潟見雄大が担当しました)

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