衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表(手前)の代表質問を聞く安倍晋三首相(奥右)と麻生太郎副総理兼財務相(奥左)=国会内で2019年(平成31年)1月30日、川田雅浩撮影
与良正男 毎日新聞 専門編集委員
通常国会が始まりました。
4月いっぱいで平成は幕を閉じ、新しい天皇陛下が誕生します。この国会は平成と、次の時代をまたぐことになります。ぜひ、未来の日本に向けた論戦を期待したいものです。
でも、残念ながら、まず早急に解明しないといけないテーマがあります。厚生労働省の統計不正問題です。
厚労省が全国各地の会社が払っている給料の状況を発表している「毎月勤労統計」という調査が、実は長年、ルールに違反して、不適切なものだったという話は、みなさんもニュースで耳にしたと思います。
人口が増えたか、減ったか。物価は上がったのか、下がったのか。家庭の教育費は平均でいくらかかっているのか。国や自治体の政策はこうした調査数字を参考に作られるものです。
つまり統計や調査は政策の土台です。それが不正確ではどうなるか、みなさんも分かるでしょう。
なぜ、そんなルール違反を始めたのか。なぜ、それがずっと続いてきたのか。厚労省はあわてて調査をしました。ところが、驚くことに、この調査もきちんとしていなかったのです。
第三者の弁護士らが職員から聞き取り調査をしていたと言っていたのに、実際には多くは厚労省の幹部が聞き取りをしていたとか、電話やメールで済ませていたとか。上司の前ではなかなか職員は本当のことは言いづらいですよね。電話やメールではおざなりの答えになりがちです。
結局、今のところ、多くの「なぜ」は分からずじまい。厚労省は調査をやり直すことになってしまいました。
国会の施政方針演説で安倍晋三総理大臣(首相)は、「この6年間、経済は10%以上成長した」などと数字を挙げて、実績をアピールしました。そうした数字の信頼性が揺らいではなりません。これは深刻な問題です。
政治部デスクなどを経て2004年から論説委員。早稲田大学大学院客員教授も務めた。TBSテレビ・ラジオや大阪MBSテレビの報道番組などでコメンテーター。1957年生まれ。