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内田麻理香・評 『ニュートンに消された男 ロバート・フック』=中島秀人・著

 (角川ソフィア文庫・1166円)

 ニュートンと同時代のイギリスに、物理学者・科学者・建築家・発明家として八面六臂(ろっぴ)の活躍をした、ロバート・フックという男がいた。フックは輝かしい業績を持つにもかかわらず、その名声は失われている。本書はその歴史の陰の主人公、フックに焦点を当てた科学評伝である。

 『ニュートンに消された男』という題は穏やかではない。著者は、現在のフックに対する扱いは正当な評価ではないという。フックは、一七世紀のイギリスの王立協会設立後まもなく科学界の寵児(ちょうじ)となった。少し遅れて、フックのライバルとして登場したのがニュートンだ。確かに、「ニュートンの前に、フックという優れた科学者がいた」という説明があってもよいものだが、そのような表現は目にしない。なお、本書は大佛次郎賞を受賞した、『ロバート・フック ニュートンに消された男』(一九九六年)の文庫版である。文庫化にあたり改題され、フックの名は副題へと押しやられた。辛(つら)すぎる。これこそ、フックが忘れられ続けていることの証左ではないか。

 肝心のフックはどのような業績を残しているのだろうか。「バネの伸びは、それに加えられた力に比例する」という、フックの法則が有名だ。他にも、生物の細胞を意味する「セル」という言葉を初めて用いた人物として、教科書に名を残している。その成果は、フックが顕微鏡による観察を集めた書『ミクログラフィア』に収められている。この本では、彼の画家としての才能や、顕微鏡を扱う実験科学者としての能力が発揮されており、当…

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