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今週の本棚

村上陽一郎・評 『ヴァーチャル社会の<哲学> ビットコイン・VR・ポストトゥルース』=大黒岳彦・著

 (青土社・3888円)

根源に迫ろうとする姿勢に迫力

 本欄の担当者に、次にはこの書物を取り上げたいのですが、と相談ないし報告をして、同意を得たので、本格的に読み始めたが、さて、えらいものに取り組んでしまったな、というのが当面の感想であった。幾つか理由はあるが、その一つは、本書の射程から言えば当然なのだろうが、例えば「キズナアイ」、「ミライアカリ」、「輝夜月(かぐやルナ)」、「ねこます」などなど、およそ評子にとっては呪文以上の意味を持たない言葉が、頻出する。それに伴って「アヴァター」だの「リンデン・ドル」だの「ビザンチン将軍問題」などという、どうやら業界の人々にとっては周知のものらしい用語も、調べない限り、評子には全く意味不明な表現も、本書には溢(あふ)れている。文字通り情報格差を身を以(もっ)て体験する。もっとも、そこまで書いて、気づいたのは、同時に本書にやはり頻発される哲学用語、例えば<f〓r(フュア) uns(ウンス)>だの<f〓r(フュア) es(エス)>だの「超越論的(トランスツェンデンタール)」などに関しては、一般の読者は、今私が感じているのと同じ知的当惑を体験されるのだな、ということだった。

 実際、著者が親炙(しんしゃ)した、マルクス主義哲学の稀代(きたい)の泰斗廣松渉ばりの、堅い漢語の洪…

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