メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

今週の本棚

村上陽一郎・評 『ヴァーチャル社会の<哲学> ビットコイン・VR・ポストトゥルース』=大黒岳彦・著

 (青土社・3888円)

 本欄の担当者に、次にはこの書物を取り上げたいのですが、と相談ないし報告をして、同意を得たので、本格的に読み始めたが、さて、えらいものに取り組んでしまったな、というのが当面の感想であった。幾つか理由はあるが、その一つは、本書の射程から言えば当然なのだろうが、例えば「キズナアイ」、「ミライアカリ」、「輝夜月(かぐやルナ)」、「ねこます」などなど、およそ評子にとっては呪文以上の意味を持たない言葉が、頻出する。それに伴って「アヴァター」だの「リンデン・ドル」だの「ビザンチン将軍問題」などという、どうやら業界の人々にとっては周知のものらしい用語も、調べない限り、評子には全く意味不明な表現も、本書には溢(あふ)れている。文字通り情報格差を身を以(もっ)て体験する。もっとも、そこまで書いて、気づいたのは、同時に本書にやはり頻発される哲学用語、例えば<f〓r(フュア) uns(ウンス)>だの<f〓r(フュア) es(エス)>だの「超越論的(トランスツェンデンタール)」などに関しては、一般の読者は、今私が感じているのと同じ知的当惑を体験されるのだな、ということだった。

 実際、著者が親炙(しんしゃ)した、マルクス主義哲学の稀代(きたい)の泰斗廣松渉ばりの、堅い漢語の洪水、そして、上述のように、単語にカタカナのルビを振る表現と欧語原綴に溢れた本書は、テーマが最も現代的な、そして、社会に生きる一人ひとりの人間に密接に関わりのある性質のものであることを考えると、そうした取っ付き難(にく)い体裁が邪魔になりそうな感なしとしない。

この記事は有料記事です。

残り811文字(全文1485文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 首相官邸ネット発信「中の人」は電通マン 前任者も 政権のSNS戦略と深いかかわり

  2. マダニ感染症で京都府内の80代男性意識不明 府内で今年初

  3. ORICON NEWS 「#まさかのトリック20周年」キャンペーン実施 7・7はトリックまつり

  4. 襲撃で亡くなったホームレスの生活の跡、フィルムに 長良川の橋の下 8月に写真展

  5. 元看護助手再審無罪「不適切な取り調べなし」 滋賀県警本部長が初めて反論

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです