SUNDAY LIBRARY

岡崎 武志・評『月まで三キロ』『スーパーカブは、なぜ売れる』ほか

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今週の新刊

◆『月まで三キロ』伊与原新・著(新潮社/税別1600円)

 伊与原新は東大大学院で地球惑星科学の博士号を取得した変わり種の作家。理系と文系の幸せな結合を短編集『月まで三キロ』で味わうことができる。

 表題作がまずいい。人生の負けがこんだ50前の男が、富士の樹海で自殺しようとタクシーを拾う。何かを察した苦労人運転手は、天竜川の鉄橋へ運ぶ。そこには「月まで三キロ」と示す標識が……。「月」は地名だが、「乗り越えられない悲しみ」を持つ男2人が、たった3キロ彼方の月を見つめる。

 「アンモナイトの探し方」は、両親の別居と受験に疲れた小6男子が、北海道・富美別(とみべつ)町で化石発掘をする老人と出会い、再生していく。「天王寺ハイエイタス」は、ブルースギターと地球温暖化が、大阪湾で切なく交差する。

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