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南米の産油国ベネズエラでの現職大統領と野党指導者の対立に、米国と中国、ロシアの大国が絡み、国際社会を二分しそうな異常な事態になっている。
きっかけは先月、強権的なマドゥロ大統領が2期目に就任したことに反発して、野党指導者のグアイド国会議長が「暫定大統領」就任を宣言したことだった。
ベネズエラはマドゥロ政権下で経済が破綻した。物価上昇率は年100万%を超え、食料・医薬品は不足し、人口の約1割にあたる300万人が国外に脱出した。もはや人道危機と言っていい。
トランプ米政権は即座にグアイド氏を承認し、マドゥロ政権を「反民主的」と断じ、米国への石油輸出を禁じるなど経済制裁を発動した。
トランプ大統領は軍事介入も選択肢の一つと示唆するなど、対立を強めるような発言を繰り返している。
一方、中国とロシアは「内政干渉」だと米国を批判し、マドゥロ政権支持を表明している。
中規模国ベネズエラの政情不安に大国が関与するのは、同国で長く反米左派政権が続いているうえ、世界最大とも推定される原油埋蔵量をめぐる利権が背景にあるからだと見られる。
米国はかねて反米左派のチャベス前政権と対立し、キューバと近い現政権に警戒を強めてきた。中南米を勢力圏だとみなすからでもある。
これに対し、中国はベネズエラに石油絡みで巨額の融資を重ねてきた。ロシアは投資に加え、軍事面で深いつながりを築いてきた。
中露とも現政権からの債務返済が困難になることを恐れ、支持せざるを得ない、とも言われている。
米国には欧州や多くの中南米諸国が、中露にはトルコや中南米の一部左派政権が同調している。その結果、国連でも対応策はまとまらない。
国際社会の対立が先鋭化するのは、米中露による大国エゴの影響ではないか。
グアイド氏が訴えているのは、野党候補が事実上排除された昨年5月の大統領選挙のやり直しだが、マドゥロ氏は聞き入れようとしない。
米中露が対立をあおるようでは、事態の解決策を見いだすことはできないだろう。