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毎日フォーラム・ファイル

データ法整備 GAFA、中国をターゲットに

プラットフォーマーのルール整備を検討するため政府が設けた有識者会議=東京都千代田区で2018年11月28日

知的所有権と個人情報収集のルールづくりが焦点

 ネット上でさまざまなデータが収集されている。そうしたデータをめぐる法制度の整備に向けた動きが進もうとしている。ターゲットになっているのは、データ収集で圧倒的な立場に立つIT(情報技術)大手と、個人や企業が持つ情報について国家統制を前提としたシステムを改めようとしない国だ。最初は、グーグルやアマゾンなどプラットフォーマーと呼ばれるIT系企業で、二番目はもちろん、中国がその対象だ。

     プラットフォーマーのIT大手には、フェイスブックやアップルを加えGAFAと呼ばれる米国の企業が名前を連ねている。一方、収集した個人情報を治安や体制の維持のために用い、海外の企業にもそれを利用できるように強要しているのが中国だ。貿易をめぐり対立が始まった米国と中国の動きが、知的所有権やデータ収集をめぐるルールづくりでも焦点となる。

     GAFAをめぐる問題はもともと、納税をめぐってのことだった。タックスヘブンと呼ばれる租税回避地に事業拠点を登録し、そこに利益を移した課税逃れに対しては、政府間の納税情報交換による規制がすでに始まっている。それに加えて、自国での収益には、それに相応する納税を自国内で行わせようという動きが出てきた。急先鋒は欧州だ。

     ネットを利用してビジネスを拡大しているIT企業が、税収基盤を侵食しているとして、一定規模以上のIT企業について、その国での売上高に3%程度の課税を行う外形標準課税型のデジタルサービス税の導入が欧州委員会(EU)で検討されている。

     GAFAなどの企業群にとって母国ともいえる米国は、サイバー分野のビジネスは成長の過渡期であり、新産業の創出などの効果を高めるには、規制はなるべく控えるべきだという姿勢をとっている。しかし、巨大な存在となったプラットフォーマーに対する納税面での不満は欧州以外にも広がっている。

     また、プラットフォーマー企業が収集した個人情報の利用についても、個人情報保護の観点から規制の網がかけられ始めた。EUは、全ての個人データの保護を基本的人権と位置付け、個人データの収集や保管について厳格な規則を設け、その順守を求める規制が昨年5月にスタートしている。個人データは域外への持ち出しは原則禁止だ。

     一方、米国や日本は、一定の情報保護を義務付けたうえで、データの流通は自由という立場だ。欧州の厳しい規制が先行していけばビジネスに支障が出てしまうとして、主要国で協議し、新たなルールをつくり、世界貿易機関(WTO)ベースの協定の締結をめざしている。

     新協定は、EUの規制への対処の一方で、中国にも焦点を当てている。中国政府は、国内で収集したデータの国外への持ち出しに対する規制を強化し、サーバーの設置も国内が前提で、政府への協力も義務化されているという。国内のIT企業を有利にし、治安や体制維持のためにも、集められたデータが利用できるようにしておこうというわけだ。

     日米欧としては、中国型の情報統制システムが、他の国にも広がっていくことを防ぐ意味も含めて、中国の情報鎖国に風穴を開ける必要がある。しかし、国によるデータ開示要請の禁止を含めた電子商取引をめぐる新たなルールを中国が率先して受け入れるはずがない。そこで、中国が加盟し、順守義務を負うWTOベースの新協定とする方向で作業が進んでいるようだ。ただ、データ利用の自由度について米欧の間には温度差があり、調整は難航も予想される。

     もう一つネット企業に関する新たな規制として注目されているのが、収集したデータをもとに、優越的な立場を利用して、GAFAのような企業が、自社以外の企業に不利な条件を押し付けていないかという問題だ。優越的地位の乱用という独占禁止政策の視点からの規制の動きだ。

     GAFAなどによるデータの圧倒的な収集力については、日欧などの先進国だけでなく、新興国も懸念している。そこで、独禁政策の観点から自国企業のビジネスが不利にならないようにしようというアプローチを日本が率先する形で進められている。

     プラットフォーム企業は、SNSなどの「場」を提供しているだけで、法的な責任を回避する姿勢をこれまで示してきた。しかし、囲い込んだデータを基に優位な立場で、中小企業やスタートアップ企業の事業活動を阻害したり、ライバル企業の買収を進めたりすれば、競争環境が阻害されてしまう。

     さらに、将来は銀行など金融系や自動車会社などをGAFAが買収して巨大な複合企業体になる可能性もある。とりあえず日本では、公正取引委員会が合併・買収(M&A)を審査する際に、データの独占化、寡占化が進まないかをチェックすることからスタートする方針という。また、データについて、経済的な価値を持つ資産と位置づけ、主要なプラットフォーム企業の行動を法的に監視する方向だ。

    行方左右する米の対中施策

     電子取引に不可欠なデータ収集とその利用については、国内を対象にした規制の強化と、WTOベースで進む国際協定の締結というアプローチがパラレルで進行する形になっている。しかし、そうしたアプローチの行方を左右するのが、米国のトランプ政権が中国に対して進めている覇権を封じるための一連の施策だ。

     輸入品に対する一方的な制裁関税をテコに中国に対して対米貿易黒字の削減を求めるだけでなく、外国企業に技術情報の開示を強要するなど知的所有権侵害、サイバー攻撃による情報の窃取、中国企業による米国企業の買収の阻止、スパイ行為の排除--といった形で米国は全面的な対中包囲策を展開し始めている。

     “新冷戦”とも言われる米中対立の構図の中で、米国の要請に同調する形で中国の通信機器大手であるファーウェイなどの製品の排除が、日本も含め広がっている。

     ネットビジネスで成功したGAFA企業の圧倒的な優位性を維持したい米国と、それに歯止めをかけたいのが日本や欧州だ。その一方で、自国優先主義を掲げ保護主義的な措置を繰り出す米国のトランプ政権の施策を批判しつつも、1党独裁の異質な体制を維持しつつ覇権を目指す中国の膨張を阻止したいという点では、米国と日欧は利害を共にしている。

     それぞれの指向が異なる中で、電子商取引のカギとなるデータの取り扱いをめぐるルールづくりが始まったが、複雑な経路をたどることになるのは確実だ。

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