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一般社団法人「JEAN」事務局長・小島あずささん

多摩川の河川敷で収集したごみ。木くずに大量のマイクロプラスチックが混在している

生活ごみが海の環境を破壊している

 使い捨ての容器などプラスチックによる海の汚染が顕在化している。一度、海洋に出たごみは回収が困難なだけでなく、プラスチックの破片を誤飲するなど海の生き物たちの命を脅かす被害が出ている。海のごみ問題に取り組む一般社団法人「JEAN」(東京都国分寺市)の小島あずさ事務局長は「市街地に散乱したごみが川を経由して海の環境を壊している。みんなの問題として考えてほしい」と訴える。(聞き手 本誌・明珍美紀)

     --海洋ごみの現状はどのようでしょうか。

     小島さん プラスチックによる海洋汚染が深刻になっています。漁業や港湾作業などで資材が流出することはありますが、海洋ごみの多くは、ペットボトルやレジ袋、容器包装など、人間が便利さのために使った生活用品です。プラスチックの生産量は世界で年間約3億1100万トンに上り、そのうち約1億トンがごみとなっています。そのうち少なくとも800万トンが海に流出しているというデータ(世界経済フォーラム報告書=2016年発表)もあります。

     --陸地の生活ごみが海に流れ込んでいるわけですね。

     小島さん 集積所のごみが強風で吹き飛ぶ。カラスがつついて散らかる。自販機脇の空き容器の回収箱が満杯になっていても構わずに周囲に置いていく光景も見かけます。そのような意図しない散乱が相当量あります。

     街中のごみが、雨や風に運ばれ、川や水路を通って一部が海に出る。JEANの地元の東京都国分寺市でポイ捨てされたポリ袋が、多摩川などを経由して東京湾に流出することは十分に考えられます。私も犬の散歩をしながら朝、自宅周辺の道路でごみ拾いをしていますが、住宅街でも1時間ほどごみ拾いをするだけで2、3袋がいっぱいになります。

     --海の生き物たちに影響を及ぼしています。

     小島さん 海鳥が漂流ごみを誤って飲み込んだり、漁業などで使用された網がアザラシの体に巻き付いて食い込んだりして、ごみが凶器になるケースがあります。

     マイクロプラスチック(5ミリ以下の大きさのプラスチック=MP)は一部の洗顔料や歯磨き粉に含まれるスクラブ剤など、初めからごく小さくつくられたものと、劣化したプラスチックが割れたり砕けたりして破片化したものの2種類あります。

     衣類の化学繊維やメラミン樹脂製スポンジからもMPは流出しています。プラスチックは自然界で分解されないため、環境中に出さないことと、破片化する前に回収することが急務です。

     --海のごみ問題に取り組むきっかけは。

     小島さん JEANは1990年9月、日本で初めて「国際海岸クリーンアップ(International Coastal Cleanup・通称ICC)」に参加した有志によるネットワーク組織としてスタートしました。ICCは米国で始まった活動で、(JEANの)創設メンバーの一人が「日本でもやってみよう」と呼びかけ、その当時、広告制作の仕事を経てエコバッグなどの企画販売をしていた私も加わることにしました。

    小島あずささん

     --国際海岸クリーンアップの特徴は。

     小島さん 米国の環境NGO「オーシャン・コンサーバンシー」(OC)が提案する手法を用いて集めたごみの内容を調べ、問題点を考えながら参加者で改善の方法を探ります。集約したデータはOCに報告し、結果が共有されるので、国内外の傾向が分かります。

     日本でのクリーンアップ活動は毎年、春と秋に実施しています。たとえば、2017年の秋は全国116の会場に計5616人が集まり、収集したごみの総数は14万6738個に上りました。硬質プラスチックやたばこの吸い殻・発泡スチロールの破片などが目立っています。

     --ごみの分別や減量が叫ばれて久しいのに、なかなか改善されません。

     小島さん それぞれはルールを守っているつもりでも、散乱ごみやポイ捨てをゼロにするのは難しいことです。自治体も、離島を多く擁する沖縄県や長崎県などは対策に力を入れていますが、温度差があります。

     解決には法的な整備も必要です。すでに09年、超党派の議員立法による海岸漂着物処理推進法(略称)が制定されています。被害の大きな地域への公的支援や、民間との連携強化などが盛り込まれました。昨年の改正で、海底ごみや漂流ごみも対象に加わりました。

     --普段の生活の中で私たちにできることは。

     小島さん まずはそれぞれの消費行動を変えることです。エコバッグやマイボトルの持参はもとより、プラスチックの使い捨てをやめる、あるいは簡易包装を企業に要望するなど、市民にできることはたくさんあります。

     --海岸クリーンアップの活動が始まって今年で30年ですね。

     小島さん JEANはICCの日本のコーディネーターとして、世界約100の国・地域のメンバーやボランティアとともに活動しています。国内では小中学校などへの出前授業やワークショップなどを続けていますが、今後は消費者運動やごみ減量に取り組む団体との連携を強め、一緒に使い捨てプラスチックの削減に力を入れていくつもりです。

     こじま・あずさ 1957年東京都生まれ。78年よりスタイリストとして広告制作の仕事に従事。88年「アトリエ・クレイドル」を設立して布製買い物袋(日本初のエコバッグ)を企画制作、販売。91年に国際海岸クリーンアップ(ICC)の日本の窓口として仲間たちと「JEAN」を設立。以来、日本で唯一の海洋ごみの専門団体として、活動を続ける。共著に「海ゴミ」(中公新書)など。JEANは2006年「第12回日韓国際環境賞」を受賞。

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