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毎日フォーラム・特集

変わる建築基準 改正法が年内に全面施行

住宅再建が進められている糸魚川大火の被災地=新潟県糸魚川市で2018年3月27日

空き家転用など「既存ストックの活用」促進

 昨年6月に建築基準法を一部改正する法律が公布された。段階的に施行され、公布から1年以内に全面施行される。2016年の新潟県糸魚川市の住宅街での大火や、17年に埼玉県三芳町で10日以上も燃えた大型物流倉庫火災など大規模火災が頻発していることから、建築物や市街地の安全性の確保、増える空き家対策として「既存ストックの活用」などの施策を掲げている。20年東京オリンピック・パラリンピックを見据えた対応への施策など多岐にわたっている。

     糸魚川市の大火は16年12月に発生した。冬の日本海の強風にあおられて延焼し、住宅など約150棟が焼けた。出火元の周辺地域は「準防火地域」に指定され、一定以上の大きさの建物は窓を防火設備とし、壁を防火構造とすることが求められていたが、建て替えが進まず、指定前から残る防火構造の現行基準を満たしていない建物が多く延焼の原因になったという。

     今回の改正では、準防火地域内で延焼の防止性能を高めた「耐火建築物」「準耐火建築物」などに建て替えた場合は、建ぺい率が10%緩和された。古い木造建築の建て替えを促す。

     17年2月には埼玉県三芳町で、事務用品通販「アスクル」の倉庫で火災が発生した。12日間にわたって燃え続け、焼失面積は約4万5000平方メートルに達した。防火シャッターに商品などの物が挟まって多くが正常に閉まらず、火災拡大の一因になったという。

     国土交通省と総務省消防庁は共同で同年3月から6月まで「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」を4回開催し、報告書を取りまとめた。それを踏まえて、改正建築基準法では、大規模な倉庫や工場に防火シャッターなど、延焼防止設備が適切に作動させるための維持管理計画の作成を義務付けた。

     改正法は、こうした頻発している大規模火災や防火関連の技術開発をめぐる状況などを前提にして「建築物・市街地の安全性の確保」「既存建築ストックの活用」「木造建築を巡る多様なニーズへの対応」の3点を改正の柱にしている。

    アパート前に設置された宅配ボックスから箱を取り出す女性=京都市北区で2017年11月8日(記事とは関係ありません)

    老人ホーム共用廊下、宅配ボックスの容積率不参入など規制緩和

     その第1弾として昨年9月25日に施行されたのは、規制緩和が中心の内容だった。老人ホームの共用廊下や宅配ボックスの設置部分などを容積率不算入にするといった規制緩和措置が取られた。このほか防火規制の見直し、日影規制の適用除外に関する手続きの見直しなどの緩和措置もあった。

     9月施行の容積率規制の緩和で、注目されたのが老人ホームなどに関わる施策だ。共用廊下や階段部分について、共同住宅と同様に容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないことになった。これは既存ストックの利用促進を図るのが目的で、高齢化の進む中で共同住宅から老人ホームへの転用をしやすくする狙いがある。

     改正法が対象とする「老人ホームなど」の施設とは入所系の福祉施設で、介護老人保健施設や療養病床など、建築基準法上、病院や診療所として取り扱うものには適用されない。従来からある容積率に地下室の床面積を入れない特例の対象と同じだ。老人ホームなどへの容積率規制の緩和で、経営的にも採算性が向上するとみられている。

     また、配送量の増大や人手不足によって、宅配ネットワークの崩壊が指摘されている宅配業界向けでは、宅配ボックスの設置を促す改正が行われた。宅配ボックスの設置部分の容積率規制が緩和され、建物の用途や設置位置を限定せず、宅配ボックス設置部分自体の面積が容積率不算入となった。

     国交省は宅配便問題の深刻化から、17年11月に共同住宅の共用廊下に設置する宅配ボックスについての運用を明確化し、上限を設けずに容積率不算入とすることを建築基準法を管轄する特定行政庁である自治体などに通知していた。改正により、住宅に限らず事務所や商業施設や病院など、建築物全般で設置しやすくなる。

     容積率不算入となる宅配ボックスの設置部分は、建築物の延べ面積の100分の1が上限で、対象となる宅配ボックスは壁や床に定着しているものに限られる。宅配ボックス設置部分には、配達された物品の預け入れ、取り出しのための空間を含む。対象範囲が明確でない場合は、預け入れや取り出し面から前方に水平距離1㍍までの部分が対象となった。

     宅配ボックスの機能や利用者についての規定はないが、単なる物品の保管を目的に設置されたロッカーやトランクルームなどは対象にならない。国交省は、特定行政庁である自治体に対して宅配ボックスの撤去などを含む用途転用による法不適合を防ぐため、必要に応じて報告を求めたり、立ち入り検査を実施したりするよう求めている。

    4階以上の商業施設・共同住宅で木材利用拡大

     容積率の規制緩和以外にも、昨年9月に緩和された内容は多い。一定の高さ以上の木造建築物を対象にした防火規制の見直しや外壁や軒裏の延焼対策、異種用途区画などの防火規定の緩和、日影規制の適用除外に関する手続きの見直し、東京五輪を見すえた仮設興行場の存続期間の延長といった内容が盛り込まれている。一方で規制強化された項目は、大規模重層長屋を想定して、接道規制を条例で付加できる建築物の対象範囲が広げられた。

     一定の高さ以上の木造建築物を対象にした防火規制の見直しでは、これまで中層建築物では壁や柱をすべて耐火構造とすることが必要で、木造の場合、石膏ボードなどの防火被覆で耐火構造にする必要があった。これに対して「木造であることが分かりにくい」「木の良さが実感できない」などの指摘があった。

     改正で、▽通常よりも厚い木材で壁や柱を作る▽延焼範囲を限定する防火壁を設け、階段にスペースの付室を確保する、などの一定の条件が整えば、中層建築物でも木材がそのまま使えることになった。「耐火構造としなくてよい木造建築物の範囲」も、現行の「高さ13メートル軒高9メートル以下」が「高さ16メートル以下かつ3階以下」に緩和された。さらに防火・準防火地域の門・塀(2㍍超)でも、現行は不燃材料にすることが求められていたが、一定の範囲で木材も利用可能となった。規制の基準見直しで4階建て以上の商業施設や共同住宅での木材利用が促進されるとみられる。

     外壁や軒裏の延焼対策では、木造建築物などである特殊建築物の外壁等などの防火基準を定めた24条の廃止など、防火関連規制が見直された。

     火災の拡大を防ぐために屋根や外壁の材質などに制限がある「屋根不燃区域」について、23条では木造建築物などを準防火構造とすることを義務付けている。さらに24条は、木造建築物などである特殊建築物について、外壁や軒裏で延焼のおそれがある部分を防火構造とすることを義務付けていた。しかし、この24条が定められた1950年当時と比べ、消防力が向上したことで準防火構造であれば延焼を抑制できると判断され、条文が廃止された。

     24条の廃止に伴い、小規模な特殊建築物の異種用途区画に関する規制も廃止された。2階以下で小規模な特殊建築物の中に異なる用途があっても、その用途の境界を区画する必要がなくなる。これらの規制緩和によって建築主の負担が軽減されるとみられている。

     外壁や窓の防火性能を高めることによって、これまでと同等の安全性を確保すれば、防火・準防火地域であっても内部の柱などに木材を利用できるようになる。今まで石膏ボードなどで覆わなければならなかった木の柱や梁は、一定の準耐火性能を確保することで木材をそのまま利用できるという。

    燃え続けるアスクルの物流倉庫=埼玉県三芳町で2017年2月19日

    「接道規制」「日影規制」も緩和

     今回の改正で影響が大きいとみられるのは、接道規制の緩和だ。現行制度では原則、建築物の敷地は、建築基準法上の「道路」に2メートル以上接していなければならず、特例で「敷地の周囲に広い空地を有する等の建築物で、特定行政庁(自治体)が交通上、安全上、防火上、及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、適用しない」(第43条ただし書)と定めていた。

     これが改正では、「避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合する幅員4メートル以上の道に2メートル以上接している建築物のうち、利用者が少数であるものとして、その用途及び規模に関し国交省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁(自治体)が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めているものについても、接道規制を適用しないこととする」とされた。特定行政庁が申請の内容と省令基準が適合するかを審査して、適合している場合は建築審査会の同意は不要になった。

     さらに改正法では、一定時間以上の日影が生じないよう建物の高さを制限する「日影規制」で、適用除外手続きの合理化に関する規定が盛り込まれた。適用除外の許可を受けた建築物で、増築や改修、移転を行う際に、許可内容に適合することが明らかな場合は、再度の許可手続きが不要となった。

     東京五輪に向け、「仮設興行場」などの仮設建築物の設置期間に特例措置が設けられた。20年の東京五輪・パラリンピックなど「国際的規模の会議や競技大会」での使用など特別の理由があり、建築審査会の同意を得た場合には、自治体が1年を超える期間を定めて、その建築を許可できるようにした。

     このほか、仮設建築物に適用する規制も見直した。既に技術基準の一部の適用を除外していたが、改正で建築材料の品質に関する規定についても適用が除外された。仮設工作物についても、存続期間が2年以内のものについては、建築材料の品質に関する規定が適用されない。

     昨年9月の改正では、大規模重層長屋を想定した規制強化もあった。近年、袋路状道路の奥地に建築物が建てられる事例が問題となっており、火災などで避難する際に、多数の居住者が接道部分に集中するなど避難に支障がでるおそれがあることから強化された。

     「長屋」とは共同住宅と違って廊下や外部階段などの共用部がなく、1階にすべての住居の玄関扉が並んでいる集合住宅を指す。2階の住居用に外側に個別に階段を設け、住居を上に重ねることでより多くの居室を作ったのが「重層長屋」で、すぐに外に出られることから規制が緩かった。自治体は条例を制定すれば、行き止まりの「袋路状道路」にのみ接している敷地に建てる建築物への規制が可能となった。火災発生時に、避難者が袋路状道路に集中することを防ぎ、救助や消防活動の妨げにならないように建物の整備が進むことを念頭に置いている。

     改正前は学校や病院、劇場など法が定めた「特殊建築物」などに該当しない長屋の場合、路地状敷地のみ条例での規制が認められていたが、袋地状敷地については規制できなかった。

     新たに条例の対象として規制強化が可能となる建築物は、戸建て住宅を除く延べ面積150平方メートルを超える建物だ。このような建物は共同住宅などと同様に敷地が接する道路の幅員や長さなど、建築物と敷地の関係について、自治体の判断で必要な制限を条例で付加できることになった。

     国交省は改正建築基準法に関する説明会を、昨年7月から全国4都市で開催した。法改正の内容全般に加え、公布後3カ月以内に施行する内容を中心に国交省の担当官が説明し、周知を図った。自治体や指定構造計算適合性判定機関などの職員、設計事務所の設計者などの建築基準法に関わる業務に携わる人が対象で、国交省は今後も改正法の全面施行に向けて周知を進めていく。

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