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余録

写生を重んじた江戸時代の画家・円山応挙は…

 写生を重んじた江戸時代の画家・円山応挙(まるやまおうきょ)は、イノシシの寝姿--臥猪(ふすい)を描くように頼まれた。伏したイノシシが竹やぶにいるとの知らせを受けた応挙は、駆けつけて写生をする▲しかしその絵を山に詳しい老翁(ろうおう)に見せると「これは臥猪ではなく病猪(やみしし)だ」という。驚いた応挙がわけをたずねると、「元気なイノシシは寝る時に体の毛が立っているものだ。絵は以前に見た病気のイノシシと実に似ている」と答えた▲応挙は老翁の話から絵を描き直すと、例のイノシシが死んだと知らせが入る。描き直した絵を老翁は「これこそが臥猪だ」と絶賛した。応挙の写生の正確さを伝える逸話だが、今いてほしいのは病猪を見抜いた老翁の方かもしれない▲昨秋、岐阜県で発生した豚(とん)コレラでは野生のイノシシによる感染拡大の封じ込めに力が注がれてきた。だがここに来て愛知県の養豚場から出荷された子豚(こぶた)により、長野、岐阜、滋賀、大阪の各府県へと感染が一挙に広がってしまった▲「極めて重大な局面」と農相も宣言する事態である。愛知県の養豚場への感染経路はまだ調査中だが、同県は通報を受けて豚の体調の異変を認識したのに子豚の出荷を許していたという。受け入れ側の府県が気色(けしき)ばんでも当然だろう▲人間には感染しない豚コレラだが、甘い警戒が防疫のほころびを生んだのなら情けない。「亥(い)」「猪」が豚を意味する中国ではよりたちの悪いアフリカ豚コレラが流行中で、日本への侵入も心配されている。いやはやとんだ亥年である。

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