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社説

「北方領土の日」と安倍首相 立脚点の後退が目につく

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 北方四島(歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島)の返還実現を求める全国大会がきのう開かれた。

     2月7日は、1855年に択捉島の北に国境線を引いた日露通好条約の調印日にあたる。政府は1981年に「北方領土の日」と定め、毎年恒例で大会を開催してきた。

     ただ、今年は会場に独特の空気が漂っていた。従来通り、4島の返還にこだわるのか、2島で妥協するのかという岐路に立っていることを多くの参加者が感じていたからだ。

     安倍晋三首相は「領土問題を解決して、平和条約を締結する」と型通りのあいさつをし、「日本固有の領土」や「北方四島の帰属」といった表現は避けた。首相退席後、元島民代表が「4島返還のメッセージが影をひそめた」とあいさつすると、会場から拍手が起きた。

    揺れた講和条約の解釈

     昨年11月、シンガポールで安倍首相とロシアのプーチン大統領が「56年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速する」と合意して以来、この岐路が明確になった。

     4島か2島か。戦後の領土問題をめぐる歴史をたどると、確かに「揺れ」が存在している。

     日本は51年9月、サンフランシスコ講和条約に署名した。そこには日本が千島列島を放棄すると書かれている。政府は条約批准の国会で千島には国後、択捉が「含まれる」と答弁し、吉田内閣の見解となった。

     ところが、次の鳩山内閣になってソ連との平和条約交渉が始まると、56年2月に千島に国後、択捉は「含まれない」とする新たな政府統一見解をまとめる。東西冷戦を背景にした自民党や米国の圧力があった。

     ただし、鳩山内閣は日本の国連加盟やシベリア抑留者の送還でソ連の協力を得るため、歯舞、色丹の2島で妥協した。それが、56年10月に署名した共同宣言だった。

     この宣言は、平和条約締結後に歯舞、色丹を日本に引き渡すと定めている。残る国後、択捉の扱いに関する記述はない。

     今、安倍首相は歯舞、色丹の「2島返還」に軸足を置いた、とみるのが自然だろう。こうした歴史を踏まえ、交渉のテーブルにある「2島返還」で決着した場合のメリットとデメリットを考えてみたい。

     国際情勢を見渡せば、「自国第一」の米国が指導力を低下させ、台頭する中国とせめぎ合う。中東の混乱は日本の資源外交に影響を与える。

     ロシアとの関係構築は、地域の安定につながるだろう。米国との同盟を維持しつつ、外交の選択肢も増える。強大化する中国へのけん制になる。液化天然ガス(LNG)を豊富に産出するロシアとの関係強化はエネルギー安全保障に資する。

     一方で、クリミア併合で関係を険悪化させる欧米は日本の外交姿勢に疑念を抱くだろう。冷戦で疲弊しながら復活したロシアは蓄えた国力を誇示しようとしている。日本が在日米軍を展開させないと確約するなら、安全保障に関わる主権を放棄したと映る。領土問題での妥協は国際的な威信を傷つけるかもしれない。

    利益と不利益の比較を

     これらを比較考量したうえで、メリットがより大きいなら、妥協することも必要だろう。しかし、昨年11月以降の交渉過程を見る限り、強い懸念を持たざるを得ない。

     北方四島について日本はソ連が第二次大戦末期に、中立条約に違反して侵攻し占拠したという立場だ。だが、ロシアは大戦の結果としてソ連領となり、日本が認めなければ領土問題の解決はないと主張する。

     ラブロフ露外相は「北方領土」の名称さえ日本は使うべきではないと要求した。これに応じるかのように、日本はこのところ「不法占拠」の表現を封印し、ラブロフ発言にも反論しない。これでは対等な交渉とは言えないのではないか。

     問題なのは、歴史認識の違いを交渉に絡めるロシアに、日本が対抗戦略を打ち出せていないことだ。

     首相が「2島返還」にかじを切ったとしても、プーチン氏は領土問題を交渉から切り離し、平和条約を先行させる可能性がある。これまでの交渉では、日本側が立脚点を後退させているように見える。

     4島の帰属を確定させないまま平和条約だけが進めば、もはや領土交渉を動かすてこを失い、「2島」ですら返還は難しくなるだろう。

     このまま前のめりで進めるのは危うい。冷静に現状を分析し、戦略を描き直すべきだ。

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