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的川博士の銀河教室

535 「はやぶさ2」のサンプル採取/2

弾丸をぶつけクレーター作る

 「はやぶさ2」では、弾丸(だんがん)を撃(う)ち込(こ)んで小惑星(しょうわくせい)のサンプルを舞(ま)い上げる採取方法に加えて、爆薬(ばくやく)を使って銅板の弾丸を加速し、人工のクレーターをつくる衝突(しょうとつ)装置(インパクター)が考案されました。インパクターは、直径30センチ、高さ20センチの円筒(えんとう)形で、質量は14キロほど。この装置は「はやぶさ2」の底面に設置され、「はやぶさ2」の降下中に分離(ぶんり)されます。そして間合いを見計らって、空中で爆破(ばくは)。その時に加速・放出された銅板(約2キロ)が、秒速2キロ以上まで瞬時(しゅんじ)に加速しながら、半球状に変形し(図1)、スピンをしながら小惑星の表面に激突(げきとつ)して直径数メートルのクレーターをつくります。

     実は、小惑星の表面物質は、太陽風によって「風化」することが知られていて、前回述べた「サンプラー」方式では、この地表の浅い部分の物質しか得ることができません。しかし、インパクターで作ったばかりのクレーターの内部にタッチダウン(着陸)できれば、激しい衝突で露出(ろしゅつ)した地下物質が採取できます。内部の物質は、この小惑星のできたての様子を保存していると考えられますから、このインパクターが採取したサンプルこそ、正真正銘(しょうしんしょうめい)の「太陽系の化石」と言えます。ぜひとも欲しいところです。

     「はやぶさ2」は、このインパクターを分離したらすぐに移動を開始し、爆発(ばくはつ)の時の破片が当たって損傷しないように、避難(ひなん)します。避難を終えたことが確認されたところで、指令が出されて、インパクターは爆破され、銅板が飛び出るわけです。そこへ「はやぶさ2」が戻(もど)ってきて、地下物質をサンプラーで採取するという段取りです(図2)。

     さらにもう一つ、人工クレーターの観測という目的もあります。インパクターをぶつけたときに飛び散るたくさんの地下物質を観測したり、形成されたクレーターの大きさや深さなどを調べることで、小惑星の構成物質や内部構造なども推測できるのです。なお、この観測には、日本が史上初めて成功したソーラーセイル「イカロス」で使った分離カメラの改良バージョン「DCAM3」が用いられます(図3)。このカメラは、みなさんからのカンパで寄せられたお金で製作したものです。

     実はね、このインパクターは東日本大震災(ひがしにほんだいしんさい)で大きな被害(ひがい)を受けた福島県の工場を中心として作られたものなんです。福島と東北の底力が見事に花開くよう期待しましょう。


    的川泰宣(まとがわやすのり)さん

     長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


    日本宇宙少年団(YAC)

     年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


     「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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