平成の記憶

時代の伝言 平成の文化 思想多極化、分断化の時代 東大教授(社会学)・吉見俊哉さん(61)

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=山下浩一撮影
=山下浩一撮影

 平成の30年を考える時、インターネット社会の到来で文化の基盤が根本から変わったことが最も大きい。しかもその方向は、2004、05年ごろを境に二つに分かれる。

 前半には、ネットが「つなぐメディア」として肯定的に語られた。誰でも発信者になれるし、横につながって草の根の運動を活発化させる、と歓迎された。ところが後半はプラスとマイナスが反転した。私たち一人一人の振る舞いや嗜好(しこう)がデータ化され、コンピューターの計算で、本人には知りたい情報だけが与えられるようになった。情報世界はタコつぼ化し、フィルターバブルと呼ばれる現象が生じた。こうしてネットは連帯のメディアから分断のメディアに逆転したと批判されていった。

 基盤の変化は文化に二つの事態をもたらした。一つは権威の崩壊だ。1980年代までは、世界中が注目する思想の流れがあった。例えば戦後、フランスからはサルトルの実存主義、レヴィ=ストロースらの構造主義、フーコーらのポスト構造主義などが登場し、世界の思想をリードした。日本でも彼らの著作は誰もが読むべき基本と見なされたが、00年代以降そういう大思想家は現れなくなった。

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