メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

石炭火力の全廃「日本は直ちに行動を」 温暖化対策 独連邦議会副議長が寄稿

ドイツ連邦議会のクラウディア・ロート副議長=同氏提供

 地球温暖化対策を巡り、日本とドイツとの間で連携を深めようと、ドイツ連邦議会副議長で日独友好議員連盟副会長、クラウディア・ロート氏(63)が毎日新聞に寄稿した。環境保護政党「緑の党」党首でもあるロート氏は、再生可能エネルギーの導入を進める一方、過去に石炭火力発電に深く依存したドイツのエネルギー転換の難しさを説き、高い技術力を背景とした日本の脱炭素化に期待を寄せる。

       ◇

     ドイツのメルケル首相は今月4、5の両日、安倍晋三首相との首脳会談のため来日した。自由貿易などについて話し合ったようだが、激動する世界にあって、協議すべき最も重要な問題の一つは気候変動だったと思う。世界有数の経済国であるドイツと日本が互いに協力すれば、非常に大きな変化をもたらしうる。

     地球温暖化が主として人間活動によることに疑問の余地はないと科学研究が示す一方、極端な気象現象とその影響はますます甚大となり、深刻な犠牲をもたらしつつある。気候変動問題はもはや議論の段階ではなく、私たちは直ちに行動を起こさなければならない。それは化石燃料の中で最も汚染度の高い石炭に手を付け始めることを意味する。

    2030年には「ゼロ」

     昨年、第一線の科学者による国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「1.5度の地球温暖化」に関する報告書を発表した。その結論は動かしがたいものだった。私たちの世代と将来の世代のために安全な気候を維持するためには、日本やドイツのような先進国は2030年までに石炭を段階的に廃止する必要がある。つまり、わずか10年後には、石炭火力発電所は一基たりとも稼働していてはならないのだ。

     国際エネルギー機関(IEA)は別の表現で同様の結論を導く。本当に危険な地球温暖化を引き起こさないため、世界全体で許容される二酸化炭素(CO2)の総排出量「炭素予算」(カーボンバジェット)の概念だ。IEAによると、既存の発電所と自動車などの産業だけで、40年までに世界の炭素予算を使い切ってしまう。ゆえにIEAのファティ・ビロル事務局長は「何であれ、CO2を排出するものを建設する余地はもうない」と言う。また辞任した世界銀行のジム・ヨン・キム前総裁は、東南アジアの成長市場での石炭火力発電の拡大は地球にとって「大惨事」だと述べた。残念なことに、今の日本は海外の石炭関連事業に対する世界第2位の融資国だ。

    経済的にも合理的

     近年、環境保護の観点からは必然とされる「石炭からの完全撤退」が、最も経済的に理にかなった選択肢にもなりつつある。ドイツでは意欲的なエネルギー転換によって再生可能エネルギーの価格が大幅に引き下げられ、18年の時点ですでに電力の約40%が、太陽光や風力などのクリーンエネルギーに由来するものになった。

     一方でドイツは苦悩をも抱える。安価な国産の石炭(褐炭)が豊富にあり、以前は石炭火力発電所の建設が最も安い選択肢と思われていた。そのため、石炭が自国のエネルギーシステムに深く組み込まれているのだ。

     再生可能エネルギーが石炭よりも安価となり、状況は変わった。石炭から再生エネへの転換について、政府から計画策定を委ねられたハイレベル委員会は最近、石炭の段階的な廃止を38年までに完了すると言った。一方で、今も企業や国が莫大(ばくだい)な資金を石炭に投じ、その資金によって雇用などが維持されている側面がある。石炭火力を一度設置してしまうと、どれほど有害であっても、稼働中の設備を取り除くのは難しい。

    日独は世界を主導して

     日本はドイツとは事情が異なる。少なくとも今、新しい石炭火力発電所を建設しなければ、CO2排出量がパリ協定での合意の数倍に増えるようなリスクを冒すことも回避できるはずだ。困難ではあるが、日本は賢明で進取の気概に富む国だ。多くの石炭火力発電所の新設がもたらす悪影響に、後になって対処するのではなく、今から動き出してはどうだろうか。

     国際社会が「CO2排出ゼロ」のエネルギーを目指すには、日本の工業力が不可欠だ。そして今年大阪で開催予定の主要20カ国・地域(G20)首脳会議のような場での日本の外交手腕も極めて重要になる。ただ世界を主導するには「もはや化石燃料をエネルギー源とすることはできない」という事実を受け入れざるを得ない。技術の進歩によって、石炭は比較的汚染の少ないエネルギー源になったかもしれないが、決して「クリーンエネルギー」にはならないのだ。

     気候変動対策で世界の先頭に立つため、ドイツと日本はいっそう協力を深めなければならない。そしてこれからの変化を推し進める上で、日本ほど適した国はない。今こそ動き出す時だ。

       ◇

     Claudia Roth 1955年生まれ。欧州議会議員などを経て98年に連邦議会議員に初当選。2013年から副議長を務める。環境保護政党「緑の党」党首も兼ねる。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. WEB CARTOP 新東名高速の6車線化が決定! 渋滞もしていないのに900億円をかけて実施する理由とは
    2. ORICON NEWS 女性描くリアルな “油絵”がSNSで反響「興味のない人にも届けたい」
    3. みなとみらいにロープウエー 20年開業目指す 桜木町駅と運河パーク結ぶ
    4. カルビー 加熱すると…ポテチ出火 販売中止
    5. 駅弁「かにめし」車内販売終了へ 鉄道ファンから惜しむ声

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです