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民主政治の危機 市民は「当事者」自覚を=小倉和夫・青山学院大学特別招聘教授

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=太田康男撮影
=太田康男撮影

小倉和夫・青山学院大学特別招聘(しょうへい)教授

 世界各地で民主政治の危機が叫ばれている。そして、その背景として社会的、経済的格差の拡大や、グローバリゼーションへの反動、ネット社会における浮動的な政治集団の影響などが指摘されている。

 数十年前、国連総会で国際人権規約が論議された際、ソ連を中心とする社会主義国のいくつかが「民主的社会」という言葉に代えて、「民主的国家」の実現という表現を主張したことを想起せねばなるまい。「西側のいわゆる民主的社会は実態はブルジョア階級が作り上げたもので、そこでは人民の真の権利と平等が実現されていない」という主張であった。もとより、この主張の全てを是認はできない。しかし、「国民全体が『政府は自分が選んで作ったものだ』と思えるような国家でなければ、真の民主政治が成り立たない」という点は正しい。言い換えれば、政府、政権に対する国民の当事者意識である。

 かつて、あるフランスの知識人と大学の自治について議論した際、「フランスの大学のほとんどは政府に人事と財政を握られているが、これでは政治権力に反抗してまで大学の自治を守ることは困難ではないか」と問うと、なんと「共和国(フランス)では、政府は市民が作ったもので、政府は市民の権利を守るために存在しており、大学の自治を守るべき存在だから懸念はない」と応答され、いささかあぜんとしたことがある。しかし、考え…

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