◆東京都世田谷区立中央図書館事業担当係長 渡辺尚子さん(60)
「読みたい」気持ち育む
渡辺尚子さんは短大で司書の資格を取得しましたが、世田谷区職員としてのスタートは図書館以外の仕事でした。やはり図書館で働きたくて希望し、2年後に「自動車図書館」担当になりました。
自動車図書館は、車の荷台に本を積んで図書館のない地域を回る移動図書館です。団地や校庭を2週に1回、1時間ほど訪問します。1回の訪問で2000冊も貸し出したことがあるほど人気で、車が来る1時間前から待っている子どもたちもいました。この時の経験が、渡辺さんの働くエネルギーになっています。
中央図書館では7年前から、読書の楽しさを広める「子ども読書リーダー」の講座を開いています。主に小学5、6年生が対象です。夏に2日間の講習を受け、調べ学習体験や発表、小さい子どもへの読み聞かせをします。兄や姉が読書リーダーになり、「楽しいから」と弟や妹を誘ってくれる家庭もあります。高校生になった1期生が来てくれて、後輩を指導してくれることもあります。
渡辺さんは図書館での仕事について「勉強した分だけ利用者に返せる、やりがいのある仕事です」と話します。本の選び方などを利用者に尋ねられると「その人のためにいい本をもっと紹介したい」と思うそうです。【野本みどり】
この仕事につくには
司書は公共図書館などで本を選んだり分類したり、貸し出しなどをする専門の職員です。司書の資格は、講習を受けたり、大学で授業を受けたりして取ることができます。自治体によって、専門職で採用する、一般の職員として採用して図書館に配属するなど、制度がちがいます。
メッセージ
人と本を結びつける仕事です。本が好きなだけでなく、いろいろなことに興味を持ってアンテナを張れるような、好奇心旺盛な人が向いています。歴史に詳しいなど、他の人より得意な分野を持つ必要があります。
私の働き方
週末や夜間の勤務もあり、不規則です。健康でないと続けられない体力勝負の面もあります。山登りが好きで、昨年は4回、高尾山(東京都)に登りました。本の整理で腰痛になると困るので、普段はエレベーターを使わず階段を上り下りしています。
私の夢
図書館や学校に来られなくても、本に触れられる環境を作ることです。絵本やわらべうた、手あそびを通して、赤ちゃんと、お母さんやお父さんがコミュニケーションを取り、目と目を合わせて触れ合ってほしいです。
プロフィル
1958年 福岡県北九州市生まれ
77年 東京都世田谷区にあった図書館短期大学に入学
79年 同短大を卒業後、世田谷区職員に。戸籍係や国民健康保険課、中央図書館準備室などを経る
2013年 4月から現職
ある一日
6:30 起床
8:15 職場到着
8:40 全体ミーティング。書架整理
10:00 開館。新刊雑誌のデータをコンピューターに入力、雑誌の表紙をフィルムで保護
11:00 おはなし会
12:00 昼食。新しく出版された本の見本から買う本を選ぶ
13:00 他の職員やおはなし会ボランティアと打ち合わせ
18:00ごろ 帰宅