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岡崎 武志・評『跳ぶ男』『釜ヶ崎合唱団』ほか

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今週の新刊

◆『跳ぶ男』青山文平・著(文藝春秋/税別1600円)

 能という芸能が、政治と深く結びついていたことは、室町期の足利義満と世阿弥の関係でわかる。しかし、江戸期には深刻なほど密接にあったことを、青山文平の長編『跳ぶ男』で知る。

 貧しい藩の道具役(能役者)の家に生まれた剛(たける)は、幼い頃に母を亡くし、年上の英才・保(たもつ)を頼りに能の道を歩んでいた。「ちゃんとした墓参りができる国にしたい」という悲願は、保の死で途絶えた。そこへ世継ぎのない藩主の急死で、剛の運命が思いがけなく大きく転回していく。

 藩の目付・鵜飼(うかい)の命で、剛は7カ月、主(あるじ)の身代わりとして立てられることになる。生き残るための能とは、役者として跳んで、跳んで、跳びまくることだ。そして、剛は江戸の能舞台に立つ。

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