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「作者の父井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった」という言葉を単行本の帯に贈ったのは瀬戸内寂聴さん。その帯が付いているのは作家、井上荒野さんの新作『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版)である。荒野さんは作家、井上光晴(1926~92年)の長女。光晴と瀬戸内さんの仲は文壇の公然の秘密だった。新作は光晴とその妻、そして瀬戸内さんをモデルにした小説。それぞれの心情に率直に切り込み、彼らの声が聞こえてくるようだ。
4年前、編集者に執筆を提案されたが一度断ったという。「スキャンダルにするのは嫌だし、母が亡くなったばかりだったから」。だが、以来このテーマが頭の片隅にあった。そんな折、瀬戸内さんに会ったところ父親の話ばかり出たという。「本当に父のことが好きなんだなと思い、私が書かないとだめだという気持ちになった。今書いて、寂聴さんに読んでもらおうと腹をくくった」
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